雑種

チェチェンへようこそ ーゲイの粛清ーの雑種のレビュー・感想・評価

3.8
ドラマ『バリー』に出てくるチェチェンマフィアのノホ・ハンクに絶賛お熱中なのでチェチェンというワードに惹かれて…という能天気にも程がある理由で観はじめたら完全にメンタル食らってしまった。ボカシ無く映し出される実際の拷問映像(リンチやレイプ等)がかなりしんどい。目に焼きついてしまう。マイノリティへの迫害に対して、よく「同じ人間のやることとは思えない」っていう人が一定数いるけど、こんなにも残虐的で卑劣で明らかな悪意を持って暴力を振るうなんて愚行は人間しかやらんよな。こんな低脳な倫理観を持つ生物は地球上に人間しかいない。“同じ人間”という括りで語るなら、信じたくない悲惨な出来事を他人事のように悲観したり同情するんじゃなくて、全ての差別に対して自分ごととして(=常に加害者になりえるという自戒を込めて)目を逸らさずに向き合わないといけないんだと思う。

「私たちは知っています。この問題の責任を取るべき人々の顔を。彼らの有罪を証明できることも分かっている。でもどうすればロシア連邦捜査委員会がこの明らかな犯罪行為に目を向けるのか、それだけがわからない。」
この言葉があまりにも重すぎた。どんなに希望を捨てずに前を向き勇気を出して立ち上がっても、常に最後に立ちはだかる途方もなく高い高い壁なんよな。これってあらゆる問題を抱えるどの国の国民も政府に対して思っている気持ちだと思う。

あとFLEEを観た時にも思ったけど、ドキュメンタリーにアニメーションやフェイスダブルという技法を用いるという技術面での進化を感じると同時に、それが当事者の身の安全を守る為に講じた策だというやるせなさよ…人間の価値観や倫理観のアップデートがテクノロジーに追いついていないという胸糞すぎるジレンマ。
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