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チェチェンへようこそ ーゲイの粛清ーのyadokariのレビュー・感想・評価

3.9
少し前のロシアのチェチェンで起きている粛清のドキュメンタリー。チェチェンというとチェチェン紛争でロシアに敵対する国かと思ったが指導者がプーチンよりの独裁者になって極端なナショナリズムに変わってしまったようだ。

LGBTQの人々に対する弾圧と粛清。イスラム原理主義と言ってもいいような、暴力が日常化している世界。それをカディロフ首長は容認していて、ゲイを抹殺しようとするジェノサイドが行われているのだ。それを容認しているプーチンの構図と見るならば、今ロシアで起きていることは、すでに萌芽があったとするべきだろう。

まず恐ろしいのは、けっして警察や国家だけの暴力ではないのだ。男尊女卑の構図の中で家族の中で当然として、道を踏み外した者は暴力(リンチ)を受ける。動画撮影された数々のリンチ映像は、見せしめの為に公開されているようなのだ。警察の拷問でもそんな感じである。

警察の拷問を受けた被害者であるゲイの青年を追っていく感じでドキュメンタリーは展開される。その家族の脅迫(本人ばかりでなく家族に対してまで)によって、国外に亡命しなければならない家族。それを支援する者たちも脅迫を受けて、亡命せざる得ない状況。独裁政治の成れの果てだった。

これは遠いチェチェンでの出来事だろうか?ネットでこうした被害者が脅迫されるような状況は日本でも起きつつあるのではないか?それを国会議員が煽ったり、スラップ訴訟を起こしたり。法までも権力側(もはや三権分立の言葉が虚しい)になってしまう状態なのだ。

ロシアのようになって政治を変えるのは至難のわざと思う。警察、司法、メディア、すべてが権力側に寄り添ってしまう。選挙も自由な投票なんて出来ない。そうした国家が崩壊するのも時間の問題だと思うが犠牲は余りにも大きい。

チェチェンの政治を受け入れたいのか(ロシア傀儡国家としての共和国)、日本にも警告されているドキュメンタリー。(2022年3月28日)
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