馮美梅

瞽女 GOZEの馮美梅のレビュー・感想・評価

瞽女 GOZE(2019年製作の映画)
3.8
瞽女(ごぜ)とは、親しく瞽女さんと呼ばれ、三味線を奏で語り物などを唄いながら、各地を門付けして歩く「盲目の女旅芸人」のことだそうです。

日本最後の瞽女と言われた小林ハルさん(享年105歳)の人生をモチーフに描かれた作品。生まれてすぐ目が見えないことがわかる両親、しかし父がすぐ亡くなり、ハルのこれからの人生の事を心配した母親は占い師にハルの未来を占ってもらった。

「この子は長生きして、周囲の人を幸せにするから瞽女にするんだ。しかしそのためには母親のあなたは鬼になるのだ」と言われる。

母親はハルが1人でも生きて行けるように、厳しく躾ける。食事の仕方(いただきますと手を合わせる事、お箸の持ち方扱い方)着物のたたみ方、髪の結方、荷物を行李に入れる事、そしてお針仕事も。最初は大きな針から少しずつ小さい針という具合に。出来ないと泣くハルに「あなたは全身が目なのだから自分でどうしたらいいか考えなさい」と言われる。

母親は自分の事なんか愛してないのではと思うハル。
そして最初のフジ親方の元で旅を始めるが、フジ親方は相当意地悪な感じで、まあ後々のハルの為と思えばそれも必要な事だったのかもしれないけれど、兎に角厳しかった。そして次にサワ親方の元で修業を積むことに。サワ親方はとても優しく、親切に瞽女のイロハを教えてくれた。

しかし、そんな中でも彼女の意思とは関係なく、勝手に嫉妬する人間からひどい仕打ちを受けたりもする。

この時代、目の見えない人間が生きて行くことって本当に大変だったと思う。そんな中で瞽女というある意味手に職を付け、そして生きて行くすべを教え込んでくれたということはある意味凄いことだと思うし、ほんにんはつらかったかもしれないけれど、障害を持つ子供を持つ親としたら独り立ちできることは有り難いことだと思うし、彼女たちが来ることで村に幸せが来るという風に言われていたということってすごいなぁと思いました。

ハルが自分が親方になった時、小さな弟子にかつて自分が母親に受けた生きて行くためのイロハを教えることに。出来ないことに泣き叫ぶ弟子に、あの時の自分を重ねた。

そしてそんな自分に行動にようやくあの時の母がどんな気持ちだったのかを知ることになる。鬼と思っていた母がどれだけ自分の気持ちを殺し、自分を一人前にしてくれたのか。改めに愛されたことを知り、その愛を弟子に優しく伝える。

文明が発達することで瞽女の文化は無くなってしまったけれど、彼女たちは決して日陰で生きていたわけではなく、いろんな人たちに娯楽という幸せを運んでくれていた貴重な存在だったんだなと、本当に見えない愛で新潟から山形など歩いて歩いていたんだと思うと本当に凄い。

ハルの子供時代を演じた川北のんさんの演技が凄かった。小林綾子さん演じるサワ親方も良かった。瞽女の仕事が単につらいだけではなく、楽しい物なんだということをいつも笑顔で教えてくれて、本当に親方次第でその人のその後の人生も変わるなぁと思った。

それは現代社会でも同じだなぁと。
馮美梅

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