TOMMY

僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46のTOMMYのレビュー・感想・評価

3.5
『みんなは、欅坂をやってて今、楽しいですか?』

人気アイドルグループ「欅坂46」の初のドキュメンタリー映画。「乃木坂46」に続く「坂道シリーズ」第2弾のグループとして2015年に結成され、16年にデビューした欅坂46は、アイドルという枠を超えた圧倒的なライブパフォーマンスと独創的な世界観でファンを魅了。NHK紅白歌合戦出場や全国での大規模アリーナツアー、異例のロックフェス参戦などを実現させ、破竹の勢いで坂道を駆け上がっていく。デビューから約3年半となる19年9月には2日間の東京ドーム公演を成功させるが、20年1月、絶対的センターだった平手友梨奈が突然脱退する。そして、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によって活動自粛を余儀なくされるなか、同年7月に無観客配信ライブ「KEYAKIZAKA46 Live Online,but with YOU!」を開催。その場で、20年10月開催のライブをもって欅坂46としての5年間に幕を閉じ、グループ名を改めて再出発することを発表する。激動の5年間の活動の中で、メンバーたちは胸の内にどんな思いを抱いていたのか。メンバーやスタッフの証言をはじめ、初公開となる貴重な記録映像の数々、そして再編集されたライブパフォーマンスの映像などを交え、欅坂46の5年間を映し出す。監督は「AKB48」や「THE YELLOW MONKEY」のミュージックビデオ、ドキュメンタリーなどを多数手がけてきたことで知られる高橋栄樹。

2015年に結成されて以降、アイドル史を塗り替え続けてきた欅坂46。個人的に自分が社会人になった年に結成されたということもあり、勝手に親近感を感じていた。楽曲も、今までのアイドルには無いメッセージ性があり、鳥肌の立つようなライブパフォーマンスに圧倒された。

確かに初期こそ先輩グループの「乃木坂46」の活躍のおかげで認知度も高く、ファンも多かった。しかし彼女達のパフォーマンスは、今までアイドルにハマらなかった人達や多くの芸能人らも虜にする、力があった。その中心にいたのが、センターの平手友梨奈。

素人の私から見ても、平手の存在感は別格だったし、ライブでは彼女から目を離すことが出来なかった。「サイレントマジョリティー」から始まり、シングルを重ねる毎に彼女の存在感は強くなっていったように感じる。

作中でメンバーも語っていたが、ファンから見ても平手だけ浮いているような感覚があった。それはやはり「不協和音」からだろう。前作の「二人セゾン」は欅坂の儚さと美しさが際立ち、平手を含めメンバー皆生き生きしたMVだった。しかし、「不協和音」辺りから本当に壊れてしまいそうなグループになっていったように思う。

平手の表現力の高さにほかのメンバーが着いていけず、平手が孤立する。そんな中握手会での事件も重なり、平手がイベントやライブを休むようになっていく。この状況に納得できないファンも多くいたように思う。やはり平手がいる欅坂とそうでない欅坂では、完成度が全く違う。欅坂のライブなのに、別のグループのライブを観ているような感覚になる。それほどまでに平手の存在は大きかった。

そして、グループは崩壊を始めていく。次々と明らかになるメンバーの不祥事。そして卒業。男関係のスキャンダルによる卒業がここまで多いグループも珍しい。その原因が何かは分からないが、ファーストシングルで日本アイドルグループのトップに立った欅坂46は、桜のように儚く、散っていった。

平手友梨奈の脱退。卒業では無く脱退という表現を使ったことに何か意味はあるのだろうか。それは分からない。しかし、平手の脱退は、ファンにとって、メンバーにとって、欅坂46の終わりを意味していた。

欅坂46が終わる。欅坂の最後の舞台である「THE LAST LIVE」。そこで披露された菅井友香センターの「不協和音」は、平手の時とは全く違うものだった。鳥肌が立った。全ての楽曲に当然平手はいない。しかし、最初から平手がいなかったと思うほど、素晴らしいパフォーマンスだった。そして発表された新しいグループ名は櫻坂46。

今思えば、欅坂の象徴だった平手友梨奈の脱退は、欅坂46のメンバーたちの平手からの卒業であり、彼女たちが真のアイドルになるための必要な過程だったのではないか。それまで平手に頼り、平手に依存し、平手がいなければ何も出来なかった彼女たちが、自ら考え、自ら行動し、自分たちで鐘を鳴らした。それが櫻坂46なのだろう。

欅坂46の存在は日向坂46にも大きな影響を与えていると思う。今でこそメディアに引っ張りだこの彼女たちだが、それまではけやき坂46として欅坂の二軍ポジションだった。そこで平手友梨奈のワンマンチームをずっと見てきた彼女たちは、日向坂46として独立したあとも、メンバー皆でグループを支えている。日向坂46は絶対的エースはいないが、全員が全員を思いやり、支え合いながら大きくなっている。その背景には、欅坂時代のグループ崩壊を見ていたことがあると思う。欅坂46は、櫻坂、日向坂二つのグループを誕生させた。

映画のレビューと言うより欅坂への感想みたいになってしまった。あと映画を鑑賞して感じたことは、大人は何をしてたんだろう。平手、メンバーのケアなどしっかり出来ていたのか。平手友梨奈を作り上げたのは間違いなく欅坂の運営である。色々批判が多い運営だが、自分たちが一つのグループを壊したという自覚を持って、櫻坂46を今までよりも力を込めて支えて欲しい。

そして願わくば、また平手友梨奈と彼女たちの笑顔のパフォーマンスを見てみたい。

『いつか来ますかね!そういう日が。』
TOMMY

TOMMY