中重優

僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46の中重優のネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます

前夜祭+映画を鑑賞してきました。
この映画のレビューは長いです。
ご了承下さい。

前夜祭では、映画に関しての感想などを
軽く話したぐらいで、
メンバーの顔を観れたこと以外は、
さほど重要ではなかったです。
事前にTwitterで募集された質疑応答も
たった一問だけしかありませんでしたし。

それよりも遥かに重要な映画の感想を
簡単にまとめてしまえば…
"Documentary of 平手友梨奈
〜天才の孤独とメンバーの苦悩〜"
といった感じでしょうか…。

只今、公開されている
日向坂46の映画は、今までのファンはもちろん
新規のファンにもわかりやすい作りでした。
それに比べると今作は、
この5年という月日を共に歩んできた
ファンの方達に対して
作られている印象を受けました。
なんせ時系列が右往左往、行ったり来たりしますし、
ある程度メンバーの関係性を知っていないと
わからない事も少なくないからです。
この映画は、これまで欅坂46を見てきた
ファンの方達が欅坂46のいろいろな出来事に対して、
少なからず答え合わせをしながら
1つの区切りをつける為の様な映画です。

デビューしたばかりの頃の
初々しいメンバー達の姿には、
"こんな事してたなー"と懐かしさを感じ、
今の欅坂しか知らない方々には、
真逆のイメージだと思います。
あんなに笑って、はしゃいでいる姿は
感慨深いです。
デビューシングルからセンターを任され
緊張している平手さんに寄り添う
守屋さん、石森さん、小林さんの姿は
メンバーとしての絆を感じられました。
この頃からの平手さんの意識の高さには、
脱帽でしたね…
"自分が納得していれば、自然と涙が出るはず
でも、今日は出なかった。
いつか来ますかね?そういう日が"と
話す彼女は、まだ笑えていました。

ですが…シングルが発売される度に、
平手さんと他のメンバーとの間に、
段々と差というか溝ができてきます。
平手友梨奈という敏感な感性と素晴らしい表現力を持ち
楽曲の歌詞の世界観に入り込み
その主人公を演じる
そんな平手さんの考えている事が
メンバーにもわからなくなっていたそうです。
ただでさえセンターというプレッシャーの中で、
欅坂の楽曲の様な主人公を表現し、
取り憑かれる事で孤立している様なシーンが
多々ありました。
まるで、映画"ダークナイト"でジョーカーを演じた
ヒース・レジャーの様な危うさです。

そして、周りのメンバーも
その感性と表現力に頼り、
いつしか平手友梨奈=欅坂46という様な
イメージになっていきます。
劇中で、
"その時のメンバーでさえ、自分たちは
平手のバックダンサーの様に思っていた"
と守屋さんが発言するほど、
周りが皆"平手友梨奈"という天才に
乗っかっている様な状態だったのです。
平手さんの表現力や感性が豊かなだけに、
ライブでの"ガラスを割れ"にて、
アドリブで1人で突っ走っていき
倒れたシーンは当時も衝撃でした。

劇中では、平手さんが出演しなかったライブでの
他のメンバーの苦悩も比率的には少しですが、
描かれています。
今までは平手さんに乗っかっていただけ、
頼り切っていたが為に、平手さんが離脱した途端に、
"平手が表現してきた楽曲を
自分達がセンターで披露できるのか…"と
思い悩む姿はその弊害とも言える出来事の様に見えました。
それを乗り越えようとする代役を務めるメンバー達の姿には、
年を追うごとに成長を感じられました。
2019年頃からのメンバー達の
意識の変化についても明言されています。
平手友梨奈=欅坂46から
脱却しようと努力していたんだな…と
わかりました。

楽曲の振り付けを担当されている
TAKAHIROさんの優しさを垣間見れる場面もあり
TAKAHIROさんいわく、
"欅坂46とは、世の中の負の感情を背負い、
表現する背負い人"だそうです。
監督から"大人の責任とは?"との質問に関しては、
"その一瞬ではない、点ではなく、この先のこと、
線のように見続けること"
と答えていました。
その言葉を聞いた時、
運営の方を含め、ファンでさえも
欅坂46の○○という、
彼女達の人生の中の一瞬だけしか
見てなかったんじゃないか…
この先の事よりも売れている今の事しか
考えていなかったんじゃないか…と
なんだかモヤモヤしました。

監督がパンフレットで話されていますが、
平手さんの新規インタビューはありません。
オファーはしたそうですが、快諾は得られず、
平手さん自身が"時がきたら自分から話す"と
ラジオ等で語った事に配慮したそうです。
なので、この映画は過去のメイキングやライブ等の映像と
周りのメンバー達のインタビューによって
構成されている為、
平手さんの真意や心情は
ハッキリとはわかりません。
あくまで映画であり、カメラが回っている時に
素を全て見せられるとは思えません。
けれど、僕が目にした映画の全てが、
嘘だとも思えません。

平手さんに対してマイナスな事を思わないと言えば、
それは嘘になります。
明らかに平手さん1人の心境などで、
メンバーが振りまされていたのも事実だと思うからです。
ですが…運営側の責任も重いと思います。
劇中でも平手さんからのSOSは、
何度もあった様に見えましたし、
平手さんだけに任せるのではなく、
他の人にセンターを任せる事は、
"10月のプールに飛び込んだ"の時など、
他にもあったはずなんです…。
"皆は今の欅坂は楽しいですか?"と
聞いた平手さんの心境は…
"もう皆とは一緒にやれないの…"と
メンバー1人、1人に伝えた時の心境は…
どうだったんでしょうね。

この映画を観た後に、
"角を曲がる"の歌詞を聴いていると
いろんな感情が湧き上がってきます。
そして、
"てち、ありがとう、本当にお疲れ様でした"
と伝えたくなります。

すごく濃厚で、決して軽くは観れない
いい映画でしたが…。
残念なことをあげるとすれば、
長濱ねるさん、今泉佑唯さんの卒業には
チラッと触れるだけ…
鈴本美愉さんに関しては、
ライブシーンぐらい…
その他の卒業メンバーには一切触れず、
なかった事の様になっていた事です。
そこをはぐらかしたまま
次のステップへ進むのもどうなのかな?とは
思ってしまいました。
事実をファンに伝える誠実さは、
必要だと思うので…。
現メンバーも全く出演しない人が居たりと、
何というか…
"Documentary of KEYAKIZAKA46"
というならどうにかならなかったのか?とは
思ってしまいましたね。
様々な憶測や噂が絶えなかった
欅坂46でしたが…
それを全て払拭できる様な映画ではないので、
タイトルに踊らされすぎて、
ハードルを上げ過ぎない方がいいかと思います。
ですが、欅坂46を知っていれば、知っているほど
込み上げてくるモノもあるはずです。

鑑賞するにあたっては、
思っている以上に、
様々な年のいろんな楽曲のライブ映像が流れるので
どうせ観るなら良い音質の映画館で鑑賞する事を
オススメします。

欅坂46と別れ、
新たな一歩を踏み出す彼女達に感謝しつつ、
これからの活動を楽しみにしています。
中重優

中重優