じぇれ

僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46のじぇれのレビュー・感想・評価

4.2
【去った彼女と残された彼女たち】
凄まじい勢いでスターダムに駆け上がった欅坂46。不動のセンター平手友梨奈さんと他メンバーの間に生じた溝は何だったのか?残された者たちの証言を軸に5年を総括する、“ゴーン・ガール”ドキュメンタリー。

ひらがなけやき(元々の2期生)や不祥事で卒業した元メンバーたちについては、本作は一切言及しない。
豊富な過去素材の中から選ばれたのは、無邪気で明るかった最年少メンバーがいかに追い込まれていったかがわかるものばかり。

そう、異能ゆえに大人たちからグループの命運を託された少女と、いつしか彼女なしでは活動できないと刷り込まれていった少女たちの記録。
この過剰な依存が生んだ悲劇が、大迫力のステージング映像とともに胸に迫ってくる。

欅坂46のファンではない私ですら、なす術もなく荒波に呑み込まれていく彼女たちを観て、気付けば泣いていた。
決して感情移入ではない。
絶望しかない暗闇の中で必死に前を向こうとする残されし者たちを見せられ、大人の1人として罪悪感と怒りが湧いてきたからだ。

はっきり言えば、大人たちの責任を殆ど追及しない本作は、片手落ちと言わざるを得ない。
劇中で説教をかます秋元康さんや運営らしき男性(ディレクター?マネージャー?)については、もっと斬り込まなければいけなかったんじゃないか?

それでも、私は本作を推す。
本作が秋元式ビジネスの一つに過ぎないという厳然たる事実にジレンマを感じながらも、私は本作を推す。

①ライブ映像では楽曲をほぼフルで流す。その迫力たるや!
②言葉を選びながらも去りし者に言及する残されし者たち。その言葉の1つ1つの重み。時に逃げながらも、結局はステージに立ち続けた彼女たちこそが本作の主役であること。
③大人たちの都合で振り回された子供たちの悲劇を通して、私のような罪深き大人は自戒の念に駆られる。決して心地のよい体験ではないが、大人として逃げてはいけない現実。

本作はアイドル映画ではない。
大人たちの犠牲になりながらも、懸命に前に進もうとする少女たちの闘いの記録だ。
不動のエースを失った残されし者たちの捨て身のパフォーマンスに、私の涙腺は崩壊した。
じぇれ

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