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晴れて今宵はの東京キネマのレビュー・感想・評価

晴れて今宵は(1942年製作の映画)
4.5
アステアとリタ・ヘイワースとの共演は『踊る結婚式』に続いて二本目。アメリカ公開は『スウィング・ホテル』公開の四ヶ月後の1942年6月。既に第二次大戦に突入しているせいもあって、観客の軽い娯楽への要求ということもあり、益々馬鹿馬鹿しいお話しに拍車がかかっているけれど、リタ・ヘイワースは相変わらずお美しいし、サビア•クガートもほぼ出ずっぱりなので、音楽映画としての見栄えは充分。眼が慣れてきたせいか、リタ・ヘイワースの踊りが重く感じるが、これはアステアが異常に軽い踊りをするので比較対象のせい。なので、リタ・ヘイワースの責任ではない。

M#1:“Chiu Chiu”
サビア・クガート楽団の顔見せナンバー。フルビッグバンドのサンバ。ザビア・クガート始め楽団員全員がノリノリ。いや〜楽しい。。。

M#2:“Dearly Be Loved”
楽団員に化けたアステアが結婚式で歌うハッピィ・ソング。受けて、リタ・ヘイワースが寝室でリプリーズ。連歌スタイルはお洒落だけど、毎日花を贈ってくれる未だ見ぬ恋人へ“もう私はあなたのものよ…”は、ちと安易じゃ無いかい?

M#3:“Audition Dance”
アステアは、ダンサーとして雇ってくれないナイト・クラブのオーナーへ直談判。ザビア・クガートと楽団員揃えて自主的オーディション。即興風のタップダンスから、どんどんアヴァンギャルドになってゆく。ヘンテコなダンスだけれどちょっと凄い。後年、アステア本人は“私の最高のソロ・ナンバーの一つ”と評している。

M#4:“I'm Old Fashioned”
“私は古風な女よ… あなたが古風であれば、むしろその方がいいの…”と唄うリタ・ヘイワースから、アステアとのペア・ダンスへ。もうエレガントでため息の出るようなロマンチックなダンス。アステアの真骨頂ですね。

M#5:“The Shorty George”
“私だってハーレムは知ってるわ。ズート・スーツの発祥地でしょ? ねえ見せて”で始まる当時流行り(?)のアメリカン・スイングやジャイブ混ぜこぜの複雑なダンス。こりゃ、アステアじゃなきゃ踊れない。ちなみに、ズート・スーツとは「ハディハディホー」おじさんのキャブ・キャロウェイ考案のダブダブなスーツのこと。日本の洋ラン・ボンタンの元ネタですな。また、表題「The Shorty George」とは、リンディ・ホップやジルバの発明者、ダンサーのジョージ・“ショーティ”・スノードンのこと。

M#6:“Wedding in the Spring”
サビア・クガート楽団による、ナイト・クラブ・オーナー夫妻の結婚25周年記念パーティでの楽曲。英文の解説には「Overly sweet and soppy number performed tongue-in-cheek by Cugat's band.」となっていて、つまり、「甘っちょろくって、感傷的なナンバーを、クガートのバンドにより、冗談めかして演奏された」とある。頬の内側に舌を押し付けると、ウインクしているような顔になって、これは本気にしないでよ、というサインらしい。アメリカ人は面白い表現をするもんです…

M#7:“You Were Never Lovelier”
嘘話だったのね、芝居だったのね、から、やっぱり愛してる、とか痴話喧嘩がブラブラブラと続き(これが結構鬱陶しい)、一件落着してタイトル・ソングからエンディング・ルーティンへ。なんか、エンディングの小芝居がゴチャゴチャしすぎて、ジェローム・カーンの名曲が台無し。アステア、リタ・ヘイワースがゴージャスに踊って、キスしてエンディングでいいじゃないの。。。
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