映画好きの柴犬

望みの映画好きの柴犬のレビュー・感想・評価

望み(2020年製作の映画)
3.9
究極の二者択一

 高校生殺人事件が起こり、行方不明の長男が関わっているかもしれないという状況で、マスコミや捜査に翻弄される家族を描くサスペンス。

 これは、派手さはないがリアルに胸に迫る佳作。過度な設定をせず、実際に起こりそうな状況設定にすることで、もし自分の家族にこういうことが起こったらと、リアルに考えさせられる。

 加害者として逃亡しているか、被害者として殺されているかという状況設定が秀逸。父は息子が加害者ではないと信じるがそれは被害者として殺されている可能性を意味する。母は加害者であっても生きて帰ってほしいと望む。妹は加害者家族となった時の自分の将来を心配する。それまで仲のいい家族だったはずが、家族が犯罪に関わっているかもしれないという状況で、三者三様の望みが浮き彫りになる様子を、落ち着いた演出で描き出す。

 家族に親身になる素振りを全く見せない警察官や、情報提供と引き換えに取材を迫る怪しい雑誌記者、通りすがりに写真を撮っていく無表情な子供たちなど、何もわからず不安な精神状態の時には、こういうふうに目に映っているんだなあという主観を表現した描写が、ちょっと怖かった。