凜

望みの凜のレビュー・感想・評価

望み(2020年製作の映画)
4.5
2023/07/20
鑑賞方法:Amazon Prime Video

思春期の子どもを育てた経験がある親御さん世代には、かなり心に刺さる作品です。

腕白でもいい…たくましく育ってほしい…(昔の某ハムCM)を絵に書いたような真っ直ぐな父親と、息子にかける愛情は文字では言い表せないほど盲目的で狂気にすら映る母親。その間に立ちながら、ある種放って置かれ気味になりつつある妹。三者三様の思いと望みが浮き出る家族の物語。

キャラクターの視点を描き分けるためか、少々典型的な表現が続きますが、それと解ってみていれば鼻につくこともないかと。

主演の堤真一さん。舞台でこういったお芝居をされることがありましたが、実際に子どもを持つ親になって、よりご自分の内側から自然に沸き起こってくる、それまでに味わったことがない感情みたいなものが出てきたかもなぁ…としみじみします。

母親の石田ゆり子さんも素晴らしい。
母親の、乱暴に一言でくくれば「母息子あるある」な愛情表現が見事です。実際の社会にもある、公的なものではない「ナニカ」に縋っていってしまう脆さも。
脚本家が女性の方でしたが、原作でもこういう描かれ方をされていたのでしょうか。女性でないと描けないよねとゾワゾワしつつ観ていました。

上げればきりがないので、文学的分析を。
出だしの「建築家が建てた理想的な家」が一つの象徴なのでしょうか。
エンディングもこの家で終幕。
それまでの形にこだわった見かけの美しさではない、再び始まる家族の家。
凜