馮美梅

望みの馮美梅のレビュー・感想・評価

望み(2020年製作の映画)
3.8
幸せそうな家族…父は建築家、母は書籍の編集を自宅でしている。妹は進学校受験を目指して、長男はサッカーをしていたけれど試合中のけがでサッカー選手の道を諦めなければならなくなった。

父の仕事柄、自宅も時々建築予定のお客さんのモデルハウスのように見学しに来ることもある。サッカーが出来なくなって、少し息子の行動を心配する父。ある日夕食の会話の中で「未来は変えられる。でも、何もしなかったら何もできない大人になるぞ」と言うけれど、イマイチ反応がない。

年が明けてしばらくしたある日、出掛けたまま息子が帰ってこなくなった。当然のことながら家族は心配、母は何度もLINEで連絡を取るけれど1度返事が来たきり音信不通…

そんな時、息子の同級生が何者かに殺された状態で発見される。
息子が関与していると言われ、息子は加害者なのか被害者なのか戸惑う家族にメディアは容赦なく家に押しかけてくる。

それはまるで息子が加害者のように。
いなくなった息子に行方に翻弄される家族やマスコミはじめ周囲の人たち。母はたとえ息子が加害者だったとしても生きてくれてさえいればいいと思い、父は息子が加害者になるわけがないと最悪の場合も覚悟している。

事件が始まる前と息子が失踪した時からの母親・貴代美を演じる石田ゆり子さんと父親・一登の堤真一さんの一気に老けた感じの表情が凄かったです。たとえ自分たちの今の生活をすべて失ったとしても息子に生きていて欲しいと願う母の必死さが狂気のようにも感じたし、噂に翻弄される妹・雅、でも自分の受験のためにお守りを買って渡してくれる心優しい兄の事は誰よりもわかっているだから置かれている状況が苦しく感じる。

自分のために何かが起きて、巡り巡りこのようなことに至ってしまったというのはあまりにも悲しい。しかしマスコミは本当にひどい。自分たちもくれぐれも情報に踊らされることなく、冷静に判断しなければヘタすれば罪もない人をたくさん傷つけてしまうことになるから。特にSNSをうのみにするのは本当に恐ろしい。
馮美梅

馮美梅