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ドント・ルック・アップのnt708のネタバレレビュー・内容・結末

ドント・ルック・アップ(2021年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

もう出てくる人、出てくる人、肩書の前に「大物」が付く俳優・女優・アーティストばかりで、正直最初のほうはストーリーが全く頭に入ってこなかった。どれだけお金を積んだらこんなに豪華なキャストをそろえることができるのだろう、、Netflixの作品はあまり好きではないのだけど、そういうビジネスライクな側面はシンプルに尊敬する。

しかし、本作はキャストの豪華さだけでごまかさず、現代のアメリカ社会ひいては世界全体を皮肉った壮大なブラックコメディであり、作品の完成度も高い。ブラックコメディと言っても面白おかしいのではなく、滑稽と呼ぶのが相応しいだろう。科学だとか事実だとかそっちのけで、私利私欲に走ったために全てを失う。そうやって大局を見失った人たちを観客は神の視点から捉えることで、滑稽な存在として笑うことができるのである。

ところが本作の最も強烈な皮肉は、作品上で登場する人々を笑っている観客たちこそ最も滑稽な存在として捉えていることではないだろうか。つまり、科学や事実を信じる人、信じない人、両方の視点を俯瞰しているにもかかわらず、それを自分事として捉えることなく嘲り笑う。それは本作の登場人物の誰よりも滑稽であり、それに気づいていないとしたらそれほど愚かなこともない。

設定こそ現実からの飛躍はあるものの、登場人物の対立構造は現実と大して変わらない。飛躍のある設定でも笑いが起こるということは、意識か無意識か、観客は現実との接点をどこかに感じているのではないだろうか。結局何をしたところで、何を言ったところで、世の中は変わらないのだろうが、何事も他人事とせず向き合うことが大切であることを強く感じた。豪華なキャスト陣に救われていることは間違いないが、映画それ自体も十分に面白い映画だったように思う。
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