鮭茶漬さん

ドント・ルック・アップの鮭茶漬さんのレビュー・感想・評価

ドント・ルック・アップ(2021年製作の映画)
5.0
再来週にはNetflixで配信されるとのことだが、先行して劇場公開されると聞いて見たが、いや、劇場で見れて良かった。というか、このレベルの作品が配信だけで終わってしまうのは実に勿体無い。

巨大な彗星により地球が滅亡するという危機的事実を見つけたディカプリオとジェニファー・ローレンス。早速、大統領に報告するも、喫煙で支持率が上がったと言うほどのすっとぼけ女で(コロナの危機を最初は聞き入れなかったトランプ前大統領のよう)、中間選挙や、最高裁判官に任命した保安官が元ポルノ男優だったことの火消しで頭がいっぱい。話を聞こうとも、理解しようともしない。それではと、メディアの力を借りるも、彼らの直前に出演した人気歌手の破局騒動にしか世間の感心は向かない始末。挙げ句の果てには、必死に説得し涙を見せたローレンスを茶化す投稿でSNSは賑わう。当然、陰謀説、反論する者が現れる。彗星の軌道修正のために、大掛かりなロケット発射計画も、科学的根拠がないにも関わらずAIが言ってるからと、そっちを鵜呑みにして中止。科学者たちが、彗星を見るために見上げろというのは、彼らが我々を上から見下すためだ! 見上げるな! (Don't Look Up)と理論崩壊した主張を繰り返す。

環境破壊が主題の映画かと思いきや、そうでもなく、社会的分断を描いている、なんか、どっかで見たような経験したような話だなと終始、他人事と思えない思いで見ていた。

2000年2010年代はテロとの戦いであったが、2020年代は民主主義が揺らぎ、良識が通じない、しかも、相応の知識のある人間であっても、科学的根拠のないSNS情報を鵜呑みにしてしまう厄介な時代だ。正にデマ情報と戦わなければならない現代を皮肉っている。反科学を信じ、真っ当な判断を怠る人類への究極の風刺映画でもある。
流石は『マネー・ショート 華麗なる大逆転』『バイス』のアダム・マッケイである! もともと、この人は、「サタデー・ナイト・ライブ」出身のディレクターだ。この番組は、政治風刺が売りの番組であり、アメリカで長年に渡り人気を博している。要は、そのスピリットをいかんなく発揮したのが、本作ということだ。軽快な語り口は嫌味に聞こえず、アホ共を滑稽に描いているのだが、実に愉快で痛快そのものである。

人類は科学技術と共に進化してきた。それが、SNSごときに危ぶまれている。コロナ騒動も、反ワクチンも正しくそうだ。根拠無き理屈で、しかもマジな顔してワクチンは人類削減計画なんだ! コロナは陰謀だ! と言うんだから開いた口が塞がらない。オミクロン株が流行しだした際に、ほんの数日で、オミクロン株はリベラル派のでっち上げだと報じたテレビ局(シャーリーズ・セロンの『スキャンダル』の局)があったように。

ディカプリオ、ローレンス、メリル・ストリープ、ケイト・ブランシェット、ティモシー・シャラメ、アリアナ・グランデ、マーク・ランス、タイラー・ペリー、マシュー・ペリー、クリス・エヴァンスなど、Netflix配信だけで終わらすには惜しいとしか言いようが無い(映画スタジオがここまでの俳優を揃えた作品を撮れないのも情けないのだが)豪華キャスト集結の豪華映画。オスカーにも食い込んでくること間違いない。コロナ禍は続く、作品同様に地球規模の危機に陥っている、まさに今こそ、何を信じるべきか、我々の知性が試されていると、この映画の強烈なラストと共にもう一度見つめ直したい。

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