アキラナウェイ

ドント・ルック・アップのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

ドント・ルック・アップ(2021年製作の映画)
4.8
数多ある彗星激突ディザスタームービーの中で、こんなにも科学者の言い分に耳を貸さない作品があっただろうか。

ほぼ100%地球は壊滅するという地獄の黙示録を目の前に叩きつけられて尚、その現実をきちんと見上げる人間と、目を逸らして見上げない人間とがいるという最大級の皮肉。

この、現実を直視しないタイプの人間をここまで趣味の悪いアイロニーでコケにしまくっているのが面白過ぎて大いに笑った。

おまけにこの豪華キャストである。

これは映画界の紅白歌合戦。
新鋭のイケメン俳優から大アカデミー受賞歴のある大御所まで、大好きなハリウッドスター達がわちゃわちゃと入り乱れているだけで楽しいったらない。

ミシガン州立大学の天文学博士課程に在籍するケイト・ディビアスキー(ジェニファー・ローレンス)が木星軌道上にある未知の彗星を発見する。彼女の教授であるランドール・ミンディ博士(レオナルド・ディカプリオ)は、この彗星が6ヶ月後に地球に到達し、地球を壊滅するに十分な大きさであると計算し、ケイトと共に人々に警告を促すが—— 。

真面目に聞いてーーーー!!!!

未曾有の人類滅亡の危機を声高に叫ぶケイトとランドールに対し、まともに
取り合ってくれない大統領(メリル・ストリープ)や主席補佐官(ジョナ・ヒル)、そしてTV番組のキャスター(ケイト・ブランシェット)ら。

悲しい程に、人類はバカなのだ。

Look up!!
or
Don't look up !!

あなたはどちら??

かつての美少年は冴えない中年に。ぽってりとしたお腹のディカプリオ。どうしてもカールしてしまう前髪すらも計算の内。眉を顰(しか)め、怒りと泣きの演技を余す事なく体現し、「Fuck!!」を連発して取り乱す。もう、これだけでサイコー。

腐っても鯛。
顔立ちはかつて一世を風靡したイケメンだもの。TV出演後は妙に人気が出ちゃう辺りも共感しかない。

前髪をぱっつんに切り落とした赤髪。鼻ピ。ファンキーなルックスとは裏腹に大真面目なサイエンティストであるケイトを演じたジェニファー・ローレンス。「WTF(What the fuck)!?」と言いたげな表情がこれまた素晴らしい。

支持率と保身しか頭にない大統領にメリル・ストリープ。そんな母を公私共に支える主席補佐官にジョナ・ヒル。まるで別人に見えるメイクで度肝を抜かすTVキャスター役のケイト・ブランシェット。イマドキの若者を体現するティモシー・シャラメ。世界第3位の大金持ちを演じるマーク・ライランス。この世の終わりよりも彼氏とヨリを戻せた事に歓喜する歌姫役にアリアナ・グランデ。

もう、誰も彼もがサイコーでサイテーな演技で魅せてくれる。

皮肉に扱われるSNSの描写もイマっぽい。

笑える、笑えないの賛否両論が出るのも当然。バカな女性大統領、発言よりも容姿を揶揄される科学者達、楽しい話題以外は受け入れない TV関係者。全てが不真面目で不謹慎。

でもね。
それが現実なんだよね。
身の回りにいるのは
そんなリテラシーの低い人間達。

あなたなら、どうする?

家族や友人と食事を囲み、
手を取り合って、祈る。

最期を迎えるそのひと時は、
こうありたい。

人生で最も美しいモーメントで幕を閉じるかと思いきや、トンデモないオチで締め、最後の最後までコケにする。監督アダム・マッケイの現実主義、ここに極まれり。

好き。