ひれんじゃく

ドント・ルック・アップのひれんじゃくのレビュー・感想・評価

ドント・ルック・アップ(2021年製作の映画)
5.0
親戚の好意で鑑賞。バカクソおもろくてやばい。単に「情報過多なこの時代、真実であっても突飛な情報はネタとして消費されてしまって誰も信じてくれないよぉ〜〜〜〜!!!!!!!!!」っていうブラックコメディじゃなくてさあ……………………………以下ネタバレ注意。



















 監督の母親がトランプ支持者っていう話を聞くとそれへの批判というか根深さを抉ってくる作品だったなと思う。露骨にテーマカラーを赤色にして支持者に訴えかける場面とかもそうだし、空を見ろ派と空を見るな派で分断されたりチリの人たちが不法入国してもええんか???と問題をすり替えたり。何を信じるかは人によって違うのは当然だけど、その信じたものがあらゆる方面から見て「正しいか」というとそれもまた違うよね…という話だけどこれどうすりゃいいんだ…………最初は懐疑的だったり話半分で聞いてても途中で空を見て彗星が地球に衝突して自分達は滅亡してしまうと気づいた人たちはいいけど(というかある意味で事実に気づけたわけだけど)いいやこれは嘘だ!と思い込もうとした人たちのことを責めるのはまた違う……………………………「自分はそれに共感したしこれが正しいと思っている」と言っている陰謀論者に対して私たちは何ができるって言うんだ…………………この差をどうやったら埋められるって言うんだ………………………………そもそもこのやり方(自分が共感できるから〜正しいと思ったから支持するという意見表明の仕方)は陰謀論者もそうじゃない人もみんなやっとるやないか……………責められんよ………………一歩間違えたら私も向こう側なのですもの。

 作中でもあったけど多分そういう一歩間違えると怪しい分野に縋ってしまう人たちは、クソでかい彗星が空に見えようとそれがだんだん大きくなろうとどんな証拠を突きつけられようと、自分の信念を守ろうとするんだろうなあ。そこで「間違いだったわこりゃやばいわ」ってなれればいいけど、自分が信じてるものの正しさを証明するためにすべてを歪めて解釈してしまいかねない。どうすればいいってんだ。そして本当陰謀論だのそういうのはすぐそこにあるんだなと。「世界的な権威がこう言ってるしみんな賛同してるし正しいと思う」という判断基準はどうしようもなく危ういが、だからといって専門的な方法で正しさを導き出すことのできない人々はそういった「専門家」の言うこと為すことを信じるしかないという。でもメディアもこうやって歪めて報道したりするわけだしマジでどうしろってんだ……………………………今のコロナもそう、これからの政治もそう、空を見上げたらもう手遅れという事態は避けたいけど、それを回避する確実な方法というのはおそらくないんだろうなと思うと、せめてラストみたいに団欒しながら最期を迎えたいもの。無理かもしれないけど。

 あと地味にディカプリオと院生の扱いの差が今にアップデートされててよかったな。アップデートというかチクチクと現状を指摘しててよかった。白人の男性はメディアに引っ張りだこだし落ち着きはらっているというレッテルを押されるけど、アフリカ系と女性のコンビだとスナックと水を投げつけられたり話を茶化されたりして取り合ってもらえない。そういう描写はあるのに何故日本を映した時日本人を登用してくれなかったんだい監督。これずっと言い続けるけど。悲しいよ。

 タイトルが「ルック・アップ」ではなく「"ドント"・ルック・アップ」なのもあのラストなのもトランプが当選してからコロナが襲いかかって無茶苦茶になってるこの世界線の話にピッタリで胸が痛い。どうすればいいっていうんだ。
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