巨大彗星が地球に接近している！という散々擦られ続けた「地球滅亡系映画」です。それをアダム・マッケイ監督と豪華な出演者たちにより見事に昇華させた素晴らしい作品です。
テーマこそシリアスですが、ブラックユーモアを取り入れ痛烈な社会風刺が効いています。「人類滅亡」という難題を些末な問題として取り合わない居丈高な大統領。視聴率のネタとして利用するテレビ関係者。そしてSNSを通じて情報を弄ぶ国民たち。我欲に満ちた登場人物たちによるデフォルメされた馬鹿馬鹿しい世界観の中にもリアリティがあり、全てのオーディエンスに対して「あなたならどうする？」と問い続けてきます。また"don't look up"という政治的スローガンの引用もおもしろい。
世間にチヤホヤされ浮き足立つ天文学者のレオナルド・ディカプリオと毎日がPMSの如く苛立つジェニファー・ローレンスのキャラクターも親近感があり、人間の「業」が上手く表現されています。
そして何より結末の描き方がとにかく美しい。最期まで救済か？滅亡か？と振り回された末、清濁併せ飲むように帰結します。またエンドロール後のワンシーンにもユーモアがあります。
フィクションの中に嫌気が差すほど「現代（リアリティ）」が切り取られた傑作です。
