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ドント・ルック・アップのtntnのレビュー・感想・評価

ドント・ルック・アップ(2021年製作の映画)
3.6
最後の食卓が、本当に嫌い。
こういう「私たち善良で良識ある人間だけが真相に気づいていて、他の奴らはバカだからわからない」っていうマインドに陥るのわかるけど、そういうのを堂々と振り翳してるからいつまでも世の中は変わらないのではないか。
しかもほぼ全員WASPだしよ。
あんな食卓にいるぐらいだったら、地球最後の時までデモ行進をして声を上げ続ける人の方が立派だし、大衆が全員暴徒orネット中毒として描かれてるのもむかつく。
タイトルに反して、いやタイトルの通り、この映画における頭上の描写はこれっぽっちも印象に残らない。
むしろ、周囲のどうしようもない惨状を、唖然として「見渡す」ジェニファー・ローレンスの横顔の方が遥かに印象的。look upせずとも、look aroundしてるうちに世界は終わる。
どれほど危機的な状況になろうとも、「笑える」こと言ったやつの方が勝ちという気持ち悪いネットミーム原理や、大学教授や院生が何万字も費やして論文書くより、140字のツイートや横長のYouTubeサムネイルの方が支持を集めるという身も蓋もない事実。トーン・ポリシングの根底にもこういう、文脈を無視した、いや文脈を切り刻んだ姿勢があるのかと思ったりした。
ただ、支持者を獲得するにはそうすることしかないのもまた事実かも。「わかりやすい」至上主義に毒されたネットメディア戦略に、大統領も教授達も参加するのだから。この映画は、「現実」を賭けた戦いの映画である。その戦いを前に、「彗星」に立ち向かってる暇はない。
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