Ricola

ドント・ルック・アップのRicolaのレビュー・感想・評価

ドント・ルック・アップ(2021年製作の映画)
3.7
現代社会の風刺であることは言わずもがな、コメディ作品と社会派作品の合間を揺れ動くリズムのメリハリがきちんとある作品だった。

地球があと半年後に滅びると言われても、にわかに信じがたい…と思うより、信じたくないという人がほとんどだろう。
パニックになる人、受け止められずに現実逃避をする人、現実を受け入れて残りの日々を生きる人、機密情報を独占する人…緊急事態に直面した人々の本性が露わになる様子と、多くの人々の考えの根底にある「なんとかなるだろう」精神ゆえの呑気さが面白おかしく描かれている。


この作品の主題自体がブラックコメディであるが、リズミカルな演出がさらに滑稽さを促す。
くだらない会話がこの映画のシリアスになりうる場面をコミカルに演出する。
「憧れのスティングに会っておならをされた」とか「ホワイトハウスで買わされたスナックが実は無料だった」とか、そういった小ネタでクスッと笑わせてくれる。

また、ショット構成においてもリズムは重視されているようだ。
例えば、ミンディ博士たちがホワイトハウスを訪問して「重大な」話をするシーン。
大統領や補佐官が話を真面目に聞いてくれないなか、大統領の写真や飾ってある肖像画が断片的に映し出される。
ただでさえ大統領の前で話をすることに緊張しているはずなのに、たくさんの「顔」が博士たちを見つめているような演出が、彼らがいかに追い込まれているかを示している。


メディアにもてはやされ、政治に利用されてそれに便乗してしまう者と辟易する者が対照的に描かれる。
マスメディアとそれに踊らされる大衆を、冷徹な視線を持った上で滑稽に浮かび上がらせる。

「考えてみるとみんな何でも持ってたんだな」
何とも痛烈な皮肉のこもった一言がグサッと刺さる。
ここ数年ガラリと変わった現実世界に重ねて考えたくなるも、重すぎずに捉えられる作品だった。
Ricola

Ricola