ドンぐり

スペシャルズ! 政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話のドンぐりのネタバレレビュー・内容・結末

4.3

このレビューはネタバレを含みます

福祉を学ぶすべての人に視聴して欲しい。
この作品の主人公の行動こそ福祉の考え方の原点なのではないかと思います。
主人公ブリュノたちの自閉症児ケア施設国の監査が入り、日常と監査員の調査が並行的に進んでいきます。
監査員の質問に対する、ブリュノやブリュノを取り巻く関係者の意見は胸が苦しくなりました。良い意味で、です。

ブリュノたちは認可されていないかもしれない。
それでもそのサービスを必要とする人々は多く存在するんです。
サービスを受ける権利があっても受けられない人々。
この方々を救えるのは国なんでしょうか?
難しいテーマです。

ブリュノたちがやっていることはとても危険だということもわかります。重度の自閉症児と対応する職員の安全を保ちながら施設を運営していく。
今の世の中ならより賛否両論激しそうですよね。でも、実際にこのサービスを受けているご利用者の家族・近しい人にとってブリュノたちがやっていることは本当に救いなんだと思います。何件も何件も言いにくいことや話したくないことも伝えて助けを求めてもすべて断られる。断られなくても薬漬けでほぼ監禁状態。それってどんな気持ちなんでしょう。それって人間の生き方なんでしょうか。経験したことのある人にしかわからないですよね。
私はブリュノたちがやっていることが、これぞ福祉だって胸が熱いようななんだか苦しいような、そんな気持ちになりました。

後半、無資格の支援員がホテルの部屋で目を離した隙に自閉症児の子がパニックを起こし行方不明になりました。結果、高速道路で発見され保護される場面がありました。
これは珍しくなく、現場ではいつだって起こり得る場面です。
視聴している私でも冷や汗が出ました。
この事件も監査で認可されない一つの理由として取り上げられます。
監査員も仕事なので仰ることはでごもっともだと思います。
でも、じゃあこのサービスを待っている人々はこれからどうしたらいいのか。
お互い仕事だから譲れませんよね。
これはグレーゾーンとして黙認にすることしかできない。

社会の中でも白黒はっきりつけてはいけない問題だと思います。
世の中にはグレーであるべき問題が多くあると思いますし、私はそれが最適解だと思って今作を観ていました。

最後、ブリュノが認可を出せない監査員に対し、ならどうして非認可の施設運営している自分たちに関係機関から連絡がくるんだ?
そう問いかけるブリュノに監査員は回答がもちろん出せません。
さらに、それならあなたたちが全員引き取ってくれ、とブリュノが監査員に対し感情的に訴えるシーンが続きます。このシーンに胸があつく、苦しくなりました。
でもこれが全てだと思いました。
実際引き取れるわけがないんです。
どの施設も断った困難ケース。この実態もよくわかります。
正直施設の運営側からすれば、現代なら特に、ご利用者本人、そのご家族、職員、その職員のご家族、国などの行政、地域の住民、法律や制度いろいろなものの間にはさまれます。
【自分たちが提供したい福祉】これを実現することの困難さは想像すらできません。

この作品は、福祉の実態を再現度高く表現していると思います。

福祉を少しでも勉強している方、これから目指す方、そうでない方も一度は視聴していただきたい作品だと思いました。
もっと広く多くの方に観てもらうべき作品です。