試写会で観ました。
「ヒメアノール」「犬猿」が面白かった吉田恵輔監督の作品だったので、内容も併せてきっと面白い作品だろうと期待していました。
吉田監督は欠点のある人物、冴えない人物を描くのがとても上手だなという印象です。
そしてその人物に特に感情移入させるでもなく淡々と描ききるので、内容が重い作品でもそんなに鬱々とせずとも観れる作品が多いように思います。
今回も重いストーリーでしたが、その中にもどこか明るさ可笑しさが漂いラストまで観れるお話でした。(褒めています)
初っ端からとても痛ましい映像があり、そのシーンの瞬間に思わず息を呑みました。
直後にタイトルロールが流れたのがとても印象的で
これから始まる物語の空虚感が表現されていました。
中学生の娘を亡くした父親。
万引きを疑い中学生の少女を亡くなる直前まで追いかけたスーパーの店長。
中学生の少女を轢いてしまった女性。
少女が亡くなった事をきっかけに負の連鎖が続くのは観ていてしんどかったです。
もし自分が誰かの立場に立ったら…と思うとやり切れない。
古田新太が演じた父親は見事で、気性が荒く感情を上手くコントロールできない他人とまともにコミュニケーションをとれないといった役どころを自分のものにしていました。
正直、この父親には私は終盤…ラスト直前までなかなか感情移入ができなかった。
作中で「充さんが自分の親ならきついっすわ」というセリフが出てくるが、本当に分かる。笑
私もあんな傍若無人の父親なら縁を切るか家出くらいはしたくなる。
それに
大事なものを失った悲しみの矛先を他人への怒りに向ける事で憂さ晴らししているようにしか見えなかった。
この父親だから負の連鎖が断ち切れずにいるのだろうと思ったし、もしもっと娘と向き合えていたら…と思わずには居られなかった…
松坂桃李の役も素晴らしく、うだつの上がらない役どころを見事に演じていました。
自分の事なのにどこか自分事じゃないような責任感のない姿から
添田に責め立てられ情緒不安定になっていく過程も良かったです。
***
不慮の事故が起きてしまった。
轢かれてしまった被害者、轢いてしまった加害者、という事実は横に置いて考えた時。
誰が「悪い」とはっきり言及はできない。
でも
誰も「悪くなかった」とも言えないもどかしさを私は終始感じてしまいました。
もう少し理解する心があれば…
これはあるひとつのボタンの掛け違いが連鎖してとてつもない恐ろしい事故に繋がったお話。
空白……
大事なものを失った時に
私達は果たして上手く立ち上がれるのか
立ち回れるのか。
作中で
加害者の女性の母親(片岡玲子)が添田(古田新太)に直接掛ける言葉がとても感慨深く、親というものはこうあるべき姿だと感じました。
実際にあの状況であんな言葉が言えるだろうか。
身につまされる思いがしました。
終始、重い展開でしたが
やはり吉田監督の他の作品と一緒で、重さの中に一縷の望みがあり観れました。
面白かったです。