ボギーパパ

空白のボギーパパのレビュー・感想・評価

空白(2021年製作の映画)
4.5
劇場2021-64 ES

9/17朝日新聞夕刊掲載映画評を読み鑑賞。
『BLUE』『ヒメアノ〜ル』の吉田恵輔監督作。
特にヒメアノ〜ルの緩急をつけた、いやつけすぎるといって良いでしょう、演出が私は大好き!
そして吉田監督の凄いところは序盤でセリフも少ない中、人間関係、その心中などを俯瞰的に見せて観客に自然と理解させるところだ!

タイトルの『空白』。人には様々な空白があるだろう。本作は登場人物それぞれの持つ様々な心の空白とその埋め方、埋まり方を描く。

オープニングからまず花音の空白。母の喪失、その母は再婚し妊娠中と彼女の置かれている状況をテンポ良く理解させる。心の不安定な頃の喪失感は時折人を良くない道へ引き摺り込む。
万引きを咎められ、逃げ出す彼女が交通事故に遭いタイトルが浮かび上がる。(吉田監督のこういったタイトル出し、カッコいい!)ここまで前述の通り俯瞰的に人間関係、人間性、その心中などをすっと理解させてくれる。

事故は関与する全ての人の人生を狂わせる。無念、怒り、恐れ、無力感、理不尽さ等々が心にぐいぐい隙間を作り空白化していく。そしてその空白を何かで埋めようとしている。

充の空白
直人の空白
クサカベさんの空白
翔子の空白
龍馬の空白
今井先生の空白
緑の空白

隙間が空白になり、その空白を何かで埋めようと足掻く。

それぞれのシーンが心に刺さる。
主人公2人の各シーンはもちろんだが、特に印象的だったのは加害者女性の母・緑のシーン。芸達者・古田新太に対する片岡礼子さん。あそこがこの映画の分水嶺であったのは間違いない!

もう一つは龍馬・藤原季節の空白を埋めにいくシーン。泣けた。

一方、クサカベさんも心の空白を埋めるため、しゃにむに動いているのも見逃せない。さすが寺島しのぶ。

映画評にあった通り誰一人無駄な存在が無く、全ての人が絡み合い、ちょっとした出番しかない人がとても重要なポジションを占める。ラストの直人に話しかける兄ちゃん、お前良い奴だな(^^)彼の心にもあの弁当買えずに空白できたのか・・

今井先生も良い。顧みることのできる人は強いよ。

こんな人たちが心の空白を少し埋めてくれる。こんな人との出会い、会話で少しずつでも埋めていけば、埋まっていけば生きていけると思わせてくれた、素晴らしい作品です。ラストのイルカ!もう号泣。そこへ持っていくまでの伏線も練りに練られており感動。吉田監督凄い!
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