あき

空白のあきのレビュー・感想・評価

空白(2021年製作の映画)
4.5
もう、どうにもならないくらい刺さった映画。
苦しくて、早い段階からずっと涙が止まらないどころかラストに向けて嗚咽を抑えるのが大変なほどだった。
娘を失った父親の喪失感と怒りによって、巻き込まれた周りの者もみな何かを喪い、居場所を失くしていく。
ただ、未亡人、男寡、孤児…、大切な人を喪い残された者の呼び名は多々あれども、子供に先立たれた親を表す名称は存在しない。
それほど、名称の不在はその喪失感や悲しみを表現しようがないほど深いことの表れの裏返しなのだ。
だから古田新太の狂気も心のどこかで共感してしまうし、
娘を失って初めて自分が娘のことを何も知っていなかった自分自身への怒りと後悔から、生前の娘の軌跡を辿ろうとする姿があまりに痛々しくて見ているこちらも感情を抑えられなくなるのだ。
でも途中で思わず吹いてしまうようなシーンや、居るだけで面白いチャンス大城を脇にぶっ込んでくるところなど、もうズルいとしか言いようがない😅
そうかと思えば監督は「Blue」の吉田監督なのね。どうりで。
「みんな、どうやって折り合いをつけてんのかなぁ」古田新太はつぶやくが、折り合いなんて、決して誰もつけることなどできず、それを胸に抱えて生きていくしかないのだ。
あぁ、今年一番どうにもならないくらい泣いた映画だった。思い出し泣きしてしまうほどの、涙のおかわり。
散々泣いた後、最後に刺す一筋の光に救われる。脱帽。
あき

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