このレビューはネタバレを含みます
こ、これは・・・すごいものを観た。
人間の感情のありのままがしっかり表現されていて、リアルすぎてめちゃくちゃ苦しい。こわい・・・
観終わった後、立ち上がる気になれなかった。こんなに気持ちを掻き乱された映画は久しぶりだ。
序盤はとにかく花音ちゃんが不憫だった。その後、衝撃の展開から天才的なタイミングでの「空白」のタイトル表示。そう、そこから空白が始まった。
その先はもう色んな人間関係と感情の渦にずっと飲み込まれる。目が離せない。一人一人の感情に自分が憑依していく感覚。すごく気持ち悪い。
おせっかいが行きすぎたおばさんの正義のおぞましさに背筋がぞくぞくし(でもなんかそうしてしまう気持ちも理解できる部分があってそれがまた気持ち悪い)、スーパーの店長の立場で苦悩し、父の立場で自身を悔やみ責める。
おばさんは偽善と言われていたけれど、私は偽善という言葉がきらい。偽善でも結果人のためになってるならなんでもいいと思う。この件の場合は、全く人のためになっていないことを相手の主張を無視して強行し続けるところに問題がある。まるで自慰。
マスコミのやり方もこうやって改めて見せられると怒りが込み上げてくるけど、あんなのよく見るニュースだ。ほんとにほんとによくあることなのだと思う。そりゃ声も荒らげてしまう。
花音ちゃんを轢いてしまった女性は謝罪のために何度も足を運んでいたけれど、謝罪される側は謝られたって意味がない。意味の無いノイズでしかない。
謝罪は、謝る側が自分のためにしている場合も多い。許されて、ラクにならたいから。
彼女はラクになれなかった。自殺するだろうなと思った。
彼女の母親の、まるで見本のような親としての振る舞いをきっかけに、父はようやく何かに気づく。
人を憎むことは自分も苦しめることになる。
人を許してはじめて、自分も救われることがあると思う。
元店長に何気なく男が話しかけ、「ありがとうございました」「お疲れ様でした」と本心からの言葉をかけた。「いつか弁当屋でもやってまたあの焼鳥弁当食わせてくださいよ」と、未来の話をしてくれた。
ふと気づいた。店長に空白が訪れてからずっと、この映画の中には「やってしまった過去」への怒りと謝罪の言葉ばかり溢れていた。
心からのありがとうとお疲れ様が、未来を想像させる何気ない一言が、店長の心をほんの少し溶かして、空白に少しの色が着いた気がした。
この映画どうやって終わらせるんだろうと途中まで思っていたけど、なんとかほんの少しほっとするラストにまとめてくれてよかった…(じゃないと今夜悪夢でも見そう)
序盤からあっという間に惹き込まれて、ラストまで息つく暇もなかった。
些細なことがきっかけで多くの人の人生が狂っていく様を本当によくここまで表現したと思う。これは現代社会に生きるすべての人に見てほしい。
しかし、ひっかかるのは店長が本当になにもしていないのかという点。腕を掴んで事務室に連れて行ったあと花音ちゃんが急に飛び出すまで見せられていないし、何よりも父と再開した時に花音ちゃんがつけていたキーホルダーを目にした瞬間これでもかと謝罪し始めるところ。非常に違和感がある。万引きした子を裏に連れていっただけで、キーホルダーなんて覚えてるか?
そう思うとあそこまで必死に追いかけたのも、痴漢したからなんじゃないかと思えてくる、、
エンドロール、製作委員会の中に電通や朝日新聞社の文字があったのは驚いた。君たち、ふだんやってる側だよね、、、どういう気持ちでこれ作ってたの・・・
それからFilmarksの文字も。なるほど、だからこれでもかとFilmarksに広告出てきてたんか😅
大変素晴らしい出来の作品であることには変わりないです。すごかった。