上田

空白の上田のレビュー・感想・評価

空白(2021年製作の映画)
4.6
吉田恵輔の最高傑作や。

人物の描写が凄まじかった。

初めは、マスメディアの偏向報道と、大衆の偏見や不寛容への批判がテーマかなーちょっと物足りないなーと思ってたんだけど、物語がすすんで、登場人物の一人ひとりの内面が掘り下げられていくにつれ、自分も登場人物に対して偏見や不寛容に満ちた感情を向けていたことに気付かされた。

自分が理解したつもりになっている人の中にも、自分の知らない空白があり、他人の中にいる自分にも埋められない空白がある。
人同士の相互理解が不可能な世界で、どうやって人同士が繋がろうとするのか、という普遍的な葛藤が主なテーマとして描かれていると思った。

後半、登場人物の内面の描写がすすんで、白いキャンバスにだんだんと絵が描かれていくように、その空白が埋まっていくことに強烈なカタルシスを感じた。
その空白に何が埋まるのか、その何かをみて登場人物はどう感じて、どう行動するのかと、人の心理に強く惹きつけられた。
また、埋まらなかった空白について考えたときに、強い余韻を感じた。

そんなことを考えながら迎えたラストで、ある空白が埋まるんだけど、その時の鳥肌がすごかった。劇場全体が鳥肌をたてたように感じた。
でもエンドロール後に拍手した人がいて、流石にそれはちょっと寒かったし、実際スベってましたね。
上田

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