空海花

空白の空海花のレビュー・感想・評価

空白(2021年製作の映画)
3.6
今年の邦画話題作の1本。延長上映に感謝。

はじまりは女子中学生の万引き未遂事件。
スーパーの奥に連れていかれた彼女は逃走し、追いかけられた先で車に轢かれ亡くなってしまう。
女子中学生の父親添田充を古田新太
スーパーの店長青柳を松坂桃李が演じる。
古田新太のモンスターっぷりと
削られていく松坂桃李の演技は鬼気迫るものを感じた。
会話は一方的だが、演技はぶつかり合い。
監督・脚本は吉田恵輔。
企画・プロデュースはスターサンズの河村光庸。

感想を先に言うと、少しやり過ぎに感じた。
毒を撒き散らすような追い詰め方
顕著に“切り取り”を行うマスコミ
生徒の目線など考えたこともないような教師
どいつもこいつも!という時間がずっと続く。

良心もない訳ではない。
悲しみの淵にいながらも、添田を諭す元妻で母親の翔子(田畑智子)
やはり悲しみに暮れながらも娘の赦しを得ようとした運転手の母親片岡礼子。
反発するものの添田を放っておけない野木(藤原季節)
遅くとも生徒の気持ちを考え始める教師、趣里もそうかな。

ここを繋ぐものが足らず、救いに突拍子がない感じが否めなかった。
やったことに対して収拾がついていっていないのも気になってしまう。

“正しい”という言葉は危険だ。
“間違っている”“間違っていない”も。
正しければ、間違っていなければ、何でも許されるのか。
愛情があるのなら、もう少し無私にはなれないのだろうか。

“空白”とは、
伊東蒼演じる花音と店長がスーパーの裏に居た時間もそうだし
父親が娘のことを何も知らないその時間とか
マスコミのいやな意図が漏れ出した情報とそれに考えもなく反応する視聴者の空虚な時間とか。
それがいわゆる“空白の時代”か。
空白はなるべく埋めてあげないと、人や心は壊れてしまう。

たった一つ、ただ同じ景色を眺めていたことでそれが埋まり、満たされることもある。

一生のうちに少しも埋まらなかったら…
いったいどうやって生きていけばいいのだろう。

結構泣けたのだけれど
何か罪悪感に似たものがついてきてしまって。。

“空っぽの世界に光はあるか”のキャッチコピー。
「ある」とは答えられない。
惜しい。


2021レビュー#185
2021鑑賞No.418/劇場鑑賞#85


ポスト・コロナのせいなのか、“怒り”がテーマになる作品が今年は多かった。
あまり晒されるとさすがにキツい。
だから007の“悲しみ”がストンと落ちたところもある。延期が幸いしたところもあるのかな(ひとりごと)
空海花

空海花