辛い。
タイトルの「空白」は、責任を負うべき人物の不在を指しているんだと思ったけど、それだけでは片付けられない。
「空白」故に、誰かの所為にしたい、悪人を見つけたい心理が物語の推進力になっていて、それはある人物の言葉、出来事に寄って終わる。
そして物語も一見、希望を見出して終わる。
でも見ていて一番辛かったのは、声が大きい者の主張が一番力を持っていて、主張できない者が割を食う構造。
脇役の中にもいたでしょ。
八つ当たりの様に矛先を向けられて、そのままフェードアウトしていく人物達。
これには結局誰も逆らえない。
実際この映画の中で一番強力だったのは、拡散力のあるメディアだ。
でも、だからこそ、最後はその中でかき消されていたであろう小さな声に希望を見出す訳だけど、それを差し引いても、辛い。
終盤の親父の態度も全く快く見れなかった。
そんな中にいれば人は、出来るだけ声を潜めて、時に叩く側に回り生きたくもなる。
そして耐えられなかった者が何をするかは、想像に難くない。
悪循環。
俺には恐ろしい「空白」を見せつけて終わった映画に見えた。
この監督は、言葉にしにくい感情を引き出すのが上手い。
他にはヒメアノ〜ルしか見てないけど、最悪な瞬間にタイトルを出してくるから、嫌でも印象に残る。
