「透明だったって」
重い余韻が付き纏っている。
情報量、というより感情を動かされる理由が多種で、一つ一つが深かった。
序盤はただ唖然とするしかなかった。
メディアの腐敗。
印象操作の胸糞悪さ全開。曲がり過ぎてて呆れてしまう。
伊東蒼、いい表情をする。
どの歳になっても需要のある俳優になると確信できるような唯一無二の魅力があった。なんか見たことあると思ったら湯を沸かすのあの子か。
寺島しのぶ、この距離感無視してズカズカ入り込んでくる演技。全部ズレてて息苦しい。めちゃんこ腹立つ。素晴らしい。キャストの中で1番良い演技だった。
無駄なシーンが一瞬もなかったのではないか。全ての登場人物が深かったし、小物の一つ一つにもちゃんとした意味を感じた。
タイトル"空白"にある通り、一人のシーンも観ている視聴者である我々でさえ事件の全貌、個人の心情が空白になっている。素晴らしいとしかいいようのない"何か"がこの作品にはあった。
幸い自分は万引きをしたことはないが、色んな環境的な要素から、こんなことを言ってはなんだが"仕方ない"時もあってしまうのだろう。万引きだけではない。一般的な"悪さ"の裏にある原因に目を凝らすことを忘れてはいけないと深く心に釘を刺された。
頑張っても頑張ってもやる気が見えないと言われる。これは辛い。これもあまり経験はないが、うーん、難しい。
最後の道路現場、焼き鳥弁当のチャラい兄ちゃんが全てを物語っていた。世界は思ったより美しくなく、世界は思ったより悪いものじゃない。
生きる辛さ、そしてどこか働くことの尊さも感じられた。
"イルカの形をした雲"
テーマ性だけでなく画や音の美しさもしっかりと内包された素晴らしい作品だった。
エンドロールが良い。
読んでくれてありがとう。
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「陸に上がって何ができるんだよ」
「お前だけは味方だと思ってたのに」
「いや別に敵じゃないっすけど、俺、親が充さんだったら正直きついっす」
「逃げずに、真面目に向き合えば人ってのはちゃんと伝わるんだよ。世の中そんな悪いもんじゃないから」
「小さい話でも深刻なるようにしたのは貴方のせいじゃないの?普通に話せる関係作れなかった貴方のせいじゃないの?」
「大盛頼むなんて食欲あんだな。そんで携帯ゲームか。へえ」
「自分は謝る以外
どうすればいいかも分かりません」
これはほんとにそう。
「お弁当、美味しかったです」
「正しいとか、善意の強要は苦痛でしかないんですよ。何なんですか正しいとか、正しくないとか」
「今はただ、全部苦しいんですよ」
「心の弱い娘です。無責任な娘です。でも、本当に優しい娘だったんです」
このシーンは涙なしに見れなかった
「疲れたな」