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空白のpersimmon1aのレビュー・感想・評価

空白(2021年製作の映画)
4.5
「みんな、どうやって折り合いつけてんだろうな…」後半、古田新太がタクシーの窓から流れる地元の海沿いの風景を眺めながら、つぶやく。隣に座っていたモトヨメはもちろんそれを拾わない。観てた私は思わず「ほんとにねぇ…」と言いそうになった。

強姦とか通り魔殺人とか以外、どちらかに100%非があることって世の中なかなかない。万引きしてるように見えたから追いかけた。実際この時はしてなかったかもしれないけど、過去にはしてた。だったら万引きする方が悪い。でもあんなに執拗に追いかけなかったら、通りに飛び出さなかったわけだから、そうなると追いかけた方が悪い、といったように堂々巡りというか、折り合いどころが見つからない…

寺島しのぶのパートのおばちゃんも折り合いどころの難しさを表してる。良かれと思ってやる桃李への関わり方もそうだし、正しいと信じてやるボランティア活動もそう。困ってる人をサポートするのは善意、でもやらないからって、同質な気持ちがないわけではない。同じ気持ちはあったとしても人それぞれ物事に対する関わり方、行動の具現化は異なるわけで。

新太さんの演じる父親は思い込みの激しさはあっても、悪い人ではないし、本人なりに論理があるのも分かる。でも季節くんの言う通り、当事者だったら「キツイっす」って感じ。絵のシーンは声出して笑わせてもらったけど。

hisで初めて季節くんを見たとき、日本人が絶対似合わないダブルのエンジのジャケットスーツみたいの着てて、やだ〜無理無理と思ったけど、この映画では唯一の救い。何が正しいとかうだうだ考えず、こんな感じで自分の感情を出していけばいいのかな、っていうお手本的存在だった。

桃李くんは特製のり弁じゃなかったクレーム電話でブチキレるシーンが好きだった。

あと蒲郡の海って綺麗だなと初めて知った。蒲郡ボートしか知らないもので。
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