あまりにも衝撃的な作品だったので、観てすぐにはレビューが書けなかった。
また、あの世界としっかり正体しなければいけない気がして、書くのに必要なちょっとの勇気に、後回しにしたいとも思った。
それだけ、あの映画の世界は強烈で容赦ない。
既に旧作コーナーの棚に移されていたが、陳列されている殆どの日本映画とは一線を画す
ここ数年の中でも群を抜いて優れた映画だ。
優れた映画は、人物たちが画面の中で生きている。クリエイターの手から確実に観ている観客に「こーゆー人物ですよ。」て伝達がしっかりされている。
本作は群像劇で、登場人物たちは、一つの大きな不幸の渦に巻き込まれてしまった人々にぐーんとズームアップし、悲しみや憎しみ、無力感や絶望感などなど、たくさんの感情を抱えきれないほど抱えてもがいている。
他者へ投げつけたはずの怒りや憤りがそっくりそのまま自分に返ってくることもある。
それらの様は、観ていて本当に辛い。
だけど、良い映画ほど観客に、突き詰めた人間像をドーンと差し出してくる。
「さあ、今度は観る側の番ですよ、考え、感じる覚悟はありますか？」って、、、
人物像がとてもしっかりしている作品は、観た後、多くを語りたい、語り合いたい。
良い映画は、たまらなく人恋しくさせる。
ちなみに、僕は寺島しのぶさんが演じた松坂桃李の店長をいつもポジティブな言葉で励ましているパートのおばさんについて語りたいなあ〜。
普通の作品だったら、励ましてくれる味方としてしか描かれないだろう人物。
この映画の怖いところ（同時に凄いところ）は、そんな彼女も剥ぎ取って見せてくれる。
ポジティブの衣を引き剥がした後に残る残虐さや自己中心な感じを。（こっち型の人って巷にたくさんいますよね、、）
コミニュケーションが取れない人同士のぶつかり合い。
一方が何かきっかけを掴んでも、相手側の受容口を塞いできた、その関係は好転などしない。終盤の主要人物2人のシーンは痛かったなあ、人は分かり合えないのかなあ、って
絶望に打ちのめされる。
役者陣はみんな良い、上手い！
辛いお話、登場人物たちがみんな怒り、下を向いている中で、寺島しのぶとは違う本当の支え役になってくれている藤原季節さん。（彼のポテンシャルすごいね、出ている映画の殆どが良作、その中でいつも大切なポジションをさりげなく果たしている！すごいぞ！季節！）
ラスト、誰とも悲しみを分ち合えなかった2人が見たものは、、それを光と呼んでいいんだろうか、希望として認められるんだろうか、、
作り手が微妙なコースに投げ込んだ球を受け止め、投げ返せるかは、私たち観客の出番なのではないでしょうか。
日本が誇れる最高級の作品なので、僕も今持っている、拙い表現を最大限に遣い、最高級のリスペクトを持って書きました💦
