このレビューはネタバレを含みます
冒頭のカント少年のまなざしでまず引き込まれる。
80分ほどの短い時間の中で描かれる、日常としてのアイヌの姿、魅力、風通しの悪さ。
舞台挨拶の解説でもあったように実際に本人役として演じたカントをはじめとする阿寒湖中学校の生徒たちの純真さや仲の良さがこの映画を明るくしていた。
たびたび、大人たち、子どもたちのコミュニティの中で話し合うシーンが差し込まれる。大人も子どもも話題の重さに差はあれどそれぞれが思い、自身の考える正しさを述べる。
主人公カントが最も考え、悩みながらも必ず行動に移す姿がこの映画のテーマを象徴していると思う。
もう1人の主人公といえるデボが、周りで陰口も言われる存在で、目的のためにカントを騙してしまうのも、時代や周囲に流されないことのあらわれのはず。
デボがカントにカムイであるフクロウの表情の魅力を伝えるシーンが、終盤のカントの表情をより一層引き立たせる。
エンドロールでの「本作はいかなる動物にも危害を加えていません」の一文が最後の最後に問を投げかけてくる。