ちろる

青くて痛くて脆いのちろるのレビュー・感想・評価

青くて痛くて脆い(2020年製作の映画)
3.6
平和の理想主義者の痛い女、秋好に入学早々ロックオンされた楓は、2人で秘密結社【モアイ】というサークルを作る。
なりたい自分になる。
世界を今よりもっと良くしたい。
そんな理想論を抱えて
秋好と一緒にいると、そんな青臭い理想論を掲げることも悪くない気がしてた。

今はいない秋好が残した【モアイ】がいつのまにか意識高い系に成り下がったサークル。

人との距離
近すぎず、離れすぎずいた自分のこと、好きなわけではなかった。

あの時、気持ちに余裕があれば、
あの時の自分がもっと強ければ、

僕はあのままあの場所にいて、たくさんの仲間と笑っていたはずなのに。

気がつけば鏡の前にいるのは、理想とは程遠い自分。
死んじまえ、あいつ
死んじまえ、あいつら
壊してしまいたい。なにもかも。

まさしくタイトル通りの青くて痛い青春だった。
厨二病引きずったような主人公楓も、秋好と共にいることで変わりたい、変われるかもと期待してたのだろう。
結局、卑屈で斜め上から見るスタンスが変わらない楓は取り残されてしまった。
お美しい吉沢亮さんの体を丸めて、ボソボソと話す、自分に自信のないダメ人間にしか見えない演技も、杉咲花さんの、少し空気の読めないほどに真っ直ぐな、でもやっぱめんどくさい系の秋好のキャラも流石で、青春から復讐劇へと変わる、この複雑構造の作品、芸達者なおふたりだからこなせたのではないかな。

青春時代は理想を追い求める時であり、現実を知る時でもある。その理想と現実の狭間で揺れ動きながら、時に誰かと衝突をして前に挑み進んでいくのが、大学時代なのだろう。

青春映画だからとたかを括っていたが、青春から離れてしまった大人だからこそ俯瞰で気付かされるものもあり、幅広い年代の人にそれぞれの立場で受け止めかたは違ってくる作品だと思う。
ちろる

ちろる