テーマ、編集、音楽、キャストの演技レベルは総じて高い。個人的には、刺さりまくりの映画だったが、主人公に感情移入できない人も一定数いる気がした。
マイノリティだった男女がマイノリティのままでいるのか、マジョリティになるのか。そこの選択の違い(生き方)がイタい結末につながっていく。そう、イタい男の行き着く先を見届る映画だ。
ただ、不自然な吉沢亮の転倒シーンはいただけなかった。名作になり得る作品も、都合を含んだ不自然なシーンで台無しなる。
ストーリーは一言でいうと、ATフィールド全開の男がマジョリティに対してクーデターをおこす話だ。信用できない主人公が暴れていくサスペンス要素もありながら、その裏には非常にイタいラブストーリーもあり、二重に楽しめる構造になっている。
鑑賞後にどこか既視感のある感情を覚えたと思ったら、「エヴァンゲリオン」なことに気づいた。
好きなシーンは二つある。
①先生が不登校の子を連れ戻すシーンとあきよしがかえでに将来のビジョンを聞くシーンが交互に展開されていくところ。
どちらも、世界観の違うもの同士が対峙するシーンで、アクションなどは一切ないが、非常に緊張感があるシーンになっている。
ここで、ある仮説を立てたい。
人を内向型と外交型に分類した場合、外交型からのアプローチは三通りあるとする。
1、変化を強要する(こちらの意見は関係なし)
2、意見の共有(こちらの意見を聞いて判断)
3、興味がない(どうでもいい)
先生は、1の変化を強要するパターンだった。逃げてばかりじゃダメだ、と学校に無理やり連れ戻そうとする。それに対し不登校児は激しく拒絶する。
あきよしは、2の意見の共有だ。かえでの意見を聞いて二人の居心地のいい場所をつくろうというスタンスで話をもちかけた。だが、そんな好意的な問いかけに対して、かえでは感情を殺して、最悪な返答をしてしまうのだ。その時の、あきよしの失望の「え?」とかえでの悲しすぎる苦笑いは、なかなかに怖いものがあった。
自分の感情からくる意見を言葉にして伝える。その大切さを思い知る場面だ。また、映像を少し揺らすことでかえでの心の葛藤が痛いほど伝わってきて、こっちまでイタくなった。
②ラストのかえでとあきよしのぶつかり合いのシーン。
あの花ちゃんの「気持ちわる」発言は個人的にトラウマレベルのえぐみがあった。
○「君の膵臓を食べたい」との共通点
・友達がいないキャラ
・根暗な主人公
・社交的で明るいヒロイン
・最後に走る主人公