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青くて痛くて脆いのmoonのレビュー・感想・評価

青くて痛くて脆い(2020年製作の映画)
4.5
【追記】
3回観賞してみて、観る度に感動が増すのは ラストへ向けてのシーン。楓が、本当になりたかった自分を想像する、映画オリジナルのシーン。その中で楓は秋好と仲間と信頼し合い協力し合って 自分が、本当に作りたかったモアイの一部となって、活動し、笑っている。そして、得意のパラパラ漫画を元気のない少年に見せる。そのパラパラ漫画の中で主人公(楓?)は 大きな壁を超え、街を超え、戦場の中で武器に依らない平和を勝ち得る!そのシーンに流れる音楽が壮大で且つ優しくて胸に迫る。そのパラパラ漫画を観た少年はニコリ。その笑顔に楓も微笑む。この映画の中で、本当に心から笑っている唯一のシーン。パラパラ漫画の主人公のように…強く、優しく、素直に …そう在りたかった!

だけど、成れなかった…自分。

切ない。もう元に戻れない…

けれど、このシーンは楓が、自分が、本当は何がしたかったのかを自身に問いかけ、その後の生き方を見詰め直せた事を 感じさせていて 切ないながら、微かな希望が、見える。
楓は 自身の罪を告白するも 相手にされず、何も変わらなかったと…。

でも、楓自身は変わった。

卒業後も施設?でボランティアをしてる。小さい事でも誰かを応援する事が出来ている。他人に関わり、寄り添う事を 誰の頼みでもなく自分の意志によって実行している!
あの 楓が…!

そして、秋好を追い掛ける。傷付く事を恐れず向き合う 力を得た楓の姿は 実に 清々しく感動する。

「ちゃんと傷付け!」

映画のオリジナルシーンからラストまでが、本当に素晴らしい演出だった!

誰だって 失敗する。傷付ける事だってある。けれど、そんな自分に向き合う勇気を持てば、やり直せなくても、未来に希望はある!そう思わせる 青春、いや人生のドラマだった。




【初日でのレビュー】

美しい…楓(吉沢亮さん)の顔が、蒼い色調で描かれていて 原作本の表紙にも通じる 一見 爽やかさと優しさを伴いながら 奥に儚さと哀しみを感じさせる ポスター。

原作を読んでしまって…失敗した!(ネタバレしてるから)と思っていたが、半年前だったため忘れたのか 映画オリジナルシーン?も あまり気にならず観ることが出来た!

結論 観て良かった映画でした!

以下 ネタバレ含みます。




原作では田端楓の「僕」が一人称で描かれているため 実際の楓はどんな顔(表情)で この台詞や心の声を語ってるのだろうか?とずっと考えながら 「楓の嘘」に付き合わされる。でも、映画は違った。

冒頭から楓の心の声モノローグで始まる。人との距離感…付き合い方…人を傷つけない…全ては…自分が傷つかない為。

解るなぁ…私も そうだった(笑)かも。
楓に共感出来るなんて 私も 相当 痛い奴かもしれない。
秋好のように「世界平和」を望んでいるけど、最初の楓のように 私も逃げるだろうな…。でも 楓は秋好の「痛さ」より 力強さと率直で真面目な「大志(世界は変えられる)」に いつしか惹かれて行く。
そして、秋好に必要とされることが 楓にとって幸せだった。二人だけで良かった。

でも 楓は自分に嘘を付いた。気付かないようにした、自分が、傷つかない為に「秋好を好き」な自分を偽った!素直になれなかった。
だから瑞希(森七菜)に「いいの?(脇坂に)取られちゃうよ」って言われても 平気なフリ(凄く嫌だった筈なのに)した。
モアイが大きくなって行くにつれ 自分の居場所が無くなって行く(あったのに勝手に)と思い込み 秋好が脇坂と付き合っていると知ると それを「嫉妬」では無く(嫉妬でしかないのに) 秋好が自分を排除したと彼女を悪者にした。
そして彼女を「この世」から消した。

「死んだんだ」というセリフは原作にはなかった気がする。でも 董介を巻き込むには必要だったし、楓が秋好をどのくらい大切な存在で だからこそ憎い…と感じさせる大事なシーンだった。

原作では 割と後半まで秋好の存在(この世には居ないと楓が言うから)が分からないままだったが、映画では楓が 董介とモアイを探る過程で 秋好の姿を楓がしっかり捉えているという伏線回収的な演出があって感情移入しやすかった。

クライマックスの楓と秋好が自分の気持ちをぶつけ合うシーンは 痛々しかった。
秋好に自分(楓)の復讐の意図(嫉妬して復讐した)を言われ、「気持ち悪っ」とまで言われて、それでもそれを認められず、逆情し、
「僕は間に合わせでしかなかったんだろう?誰だって君は良かった」という楓の言葉に…長い沈黙のシーン。
「沈黙」=「Yes」なのか「No」なのか….
音も動きも無く ただ二人を捉えた沈黙のシーンが なんとも息を呑む。(素晴らしい演出)

秋好が深く傷ついた事を知った時、初めて楓は自分のした事の重大さに気付いて謝りたくて探し回る。そして、脇坂に秋好の居場所を尋ね、自分の気持ちを吐露する。自分の過ちも。そして脇坂はそれに答える。

「みんな誰かを間に合わせに使いながら生きているんじゃない…?」

凄く 刺さった。


「だけど、その時は必要とされてたわけだから それでいいんじゃない…?」


その言葉で 私もなんだか救われた気がした。柄本佑さんの何もかも包み込むような大きさが良かった。さすが!

楓がなりたかった自分を想像するシーンは原作に無く 映像だから成り立つ場面として素敵で 、でも…たまらなく切ない。(楓の笑顔が最高だから余計に)
そこで涙する楓を観ることで…ラストシーンも生きて来る。そして 或る希望も感じさせ良い余韻が生まれたと思う。

ドラマの「銭ゲバ」の最終回のシーンを思い出した。銭ゲバの主人公には未来はなかったが、

楓には 有る!! いくらでも これから始められる未来が有る!!

秋好を肯定し、自分を偽らず 皆を頼ってモアイを理想の形に作りあげて行くことだって出来る!社会人になった後も 楓はボランティアをしてる…。

ラストシーン
秋好お気に入り?の赤いロングスカートを見つけた楓。
今度こそ 本当の自分で向き合え!!追い掛ける楓。

「無視されてもいい。その時もう一度、ちゃんと傷つけ!」


その勇気と行動と覚悟に拍手👏!


原作と同じ終わり方。爽やかな余韻が残った。
エンドロールの歌「ユメミグサ」が、楓の心情を表していて 切ないながら メロディの軽やかさが 木漏れ日のような希望も感じさせてくれる。




このレビューを書いた後、原作をちらっと読んでみたら、色々と設定とか人物とか違っていた。楓はあくまでも秋好を恋愛対象とは思ってなかった? そうだった!
でも…原作の通りだと楓の行動にイマイチ リアリティがなく、楓が秋好を好きだったという演出(私にはそう見えた)の方が 楓に感情移入出来てわかり易かった。
脇坂の言葉も楓自身が思った事だったが 脇坂に語らせたのが良かったと思う。

吉沢亮さんは このような普通?の大学生の役は初めてだと思うが、見事に普通だった 。でも、復讐に狂う楓は さすがの演技で圧倒される。そして 脇坂に懺悔するシーンも痛々しくまさに青くて痛くて…脆かった。そして やはり声の良さ!モノローグにも楓の感情がアリアリと表れていて良かった。

杉咲花さん この役が、本当にピッタリだった。住野さんは秋好を杉咲花さんモデルに書いたのかな?と思うほどに、可愛くて強くて真っ直ぐな秋好を体現していた!

脇を固める俳優さんとても良かった。
特に岡山天音さんは 楓に簡単に協力する友人 董介を漂々と演じてリアリティをもたせていた。原作では彼の行動が理解できなかったが、映画で納得した。


↑↑こう書くと原作ファンから意義を唱えられそうだけど…(私が単に小説を読み込む力がないのかも…)
映画は映画として 良い作品だと思う。

また すぐ2回目を観に行く予定。
観たら また 違うレビューになるかもしれない(笑)



# 楓が パラバラ漫画を書く才能が有るなんて原作には無い。パラパラ漫画はアニメの基本で 難しい技なのです。ラストの漫画は素晴らしかったです!映画がパラパラ漫画から始まるのはどなたのアイデアでしょう?#
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