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のさりの島のjamのレビュー・感想・評価

のさりの島(2020年製作の映画)
4.0
素顔、とはよくいったもので
意識していない"素"の顔こそが
その人そのものをあらわしている気がする

天草にたどり着き、目にした看板の番号に電話するのは"オレオレ詐欺の男"だし
鍵のかかってない料金箱から財布にお金を無造作に入れる顔はやはり得体の知れない犯罪者だ

けれど
山西楽器のおばあちゃんのご飯を「美味いっす」とばくばく食べるその顔は健全な男子の顔で
おばあちゃんに「何か手伝おうか?」と優しく話すのは紛れもなく孫の"将太"の顔だ

どれも
その時の彼をあらわす顔で
そのどれが正体なのか


のさり、とは天草弁で"良いことも悪いことも天からの授かりもの"という意味で、謂わば優しさの原点ではないかという


地元に残り、古き良き天草を残そうとする"清ら"にも、
行きたいから東京に行く"ゆかり"にさえ
のさり、の精神が染み渡っているのがうかがえる
"綾乃"が奏でるブルースハープが全てを優しく包み込み、ゆったりと時が流れる



"将太"としてどんどん柔らかい顔つきになる彼が見つけた一枚の写真
崎津教会の前で微笑むおばあちゃんと"将太"を見つめた彼の顔には
それまでにはない彼の想いが浮かんでいた


岬のマリア像を見上げる
その顔は
将太であり、藤原季節である
そんなふうに感じて


少し寂しげに見える
藤原くんが
またどんな顔を見せてくれるのか
そんな期待を胸に
劇場に足を運ぶ
jam

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