品川巻

街の灯の品川巻のレビュー・感想・評価

街の灯(1931年製作の映画)
4.8
2回目の鑑賞。
観ながら感情がぐちゃぐちゃになり、すすり泣くとかではなく大粒の涙が10滴くらいポロポロポロポロ直下に落ちた。(あのアインシュタインも泣いたらしい。)
以下、長文駄文お許しください↓

そもそもトーキー映画でチャップリンのファンになったので、無声映画だと魅力半減すると思っていた当時の私は大アホ。喋っていないのに、表情だけで状況を伝えられる構成力が天才的だった。
チャップリンは頭を使って体を張っているので、ボクシングシーン🥊や石鹸シーン🧼はこの令和時代に観ても爆笑もんだし、約1世紀前の映画とはとても思えない。

しかもチャップリンは自らが汚れ役になることで、立場が下の者が権力者を揶揄するという構造にも嫌味のなさを与えていて、
誰にも不快感を与えずにシニカルな笑いを提供するという、コメディアンが出来そうで出来ないことを難なくやり遂げていることも偉大🎩

最後の彼女の絶妙な表情は、全ての感情が混ざり合った正直なもの。
短絡的に舞い上がっていなかったのもリアルで、それが余計にほろ苦くて、私まで苦しくなってしまった。
(もう一回あのシーンを見てみたら、彼女は握ったチャップリンの手を自分の胸に引き寄せていたので、ただの憐れみではなかったと認識した)

彼は恋愛からじゃなくて"父性"に近い思いで彼女に献身していたからすぐにその場を立ち去らなかったのかなとか(みすぼらしい姿を見せないように立ち去るかしそう)、
利己的な感情が無かったから名乗らなかったのかなとか、
無償の愛の背景についてここまで想像力を駆り立てられるカットに出会えることは、世界中の映画ファンの冥利に尽きる瞬間に違いない。

相手の思いやりや暖かさを感じるのは、決して目だけではない。
たとえ目が見えなくても、見えていても。
品川巻

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