Keigo

街の灯のKeigoのレビュー・感想・評価

街の灯(1931年製作の映画)
3.8
チャップリンの最高傑作との呼び声も高い『街の灯』。爆笑問題の太田光もチャップリン作品の中で『街の灯』をベストに挙げていたりしたので、無意識下でちょっとハードルが上がってしまっていたのかもしれない。もちろん決して悪くはないんだけど、ど真ん中にズバッ!とはこなかったというのが正直な印象。それがなぜなのかは、まだ自分の中でも掴みあぐねている。

直近でバスター・キートンの作品をいくつか観ていたのもあってか、キートンとチャップリン、両者の違いがより際立って感じられたような気がする。その違いを論じようとすればそれこそ論文のひとつやふたつ書けるような話しだと思うので、僕のようなペーペーがサクッと言語化するのは難しいけれど、簡単に言えばキートンはよりスラップスティックで、ただ笑えるという領域を超えた曲芸的な身体表現としての驚きや凄みがあって、対するチャップリンは表情や動きの繊細さを持ち合わせながら、コメディという大枠の中にユーモアだけではなくいろんな要素を器用に持ち込むバランス感覚の良いイメージ。

どちらが優れているなどということを言うつもりは毛頭ないけれど、自分が付けたスコアを見るに、どうやら自分はキートンの作品の方が好みらしい。少なくとも今のところは。

ただやっぱりボクシングのシーンなんかは試合前からの流れも含めて白眉だし、何よりもラストシーンには他の作品では中々得がたい感動があった。これも無理矢理言語化してみると、登場人物へ共感したことによる感動ではなくもっとメタ的な、作品が作られた時から今日までに経過した時間や、この作品が作られたアメリカという国と自分が生まれた日本という国の物理的な距離など、自分と作品との間にある壁や距離のようなもの、それらのことを無に帰して時空を超えてくるような、そんな感動があった。

こうやって書いているともっとスコアが高くてもいいような気がしてくるものの、とりあえずは自分の最初の反応を大切に。
またいつか観たいとは思うから、その時に変えたければ変えればいい。
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