義民伝兵衛と蝉時雨

海を待ちながらの義民伝兵衛と蝉時雨のレビュー・感想・評価

海を待ちながら(2012年製作の映画)
3.6
掛け替えのないものを失った世界。
良き時代の色鮮やかな豊かな海の残り香と、
目の前に広がる変わり果てた殺伐とした枯れた荒野。
地の底まで届くかのような、過去と現在を断絶する無情な裂け目。
そこから吹き荒ぶ、涙も枯らす焦熱。
罪と罰。
業火の如き果てしない荒野の真っ只中を、
光輝く過去へと、
そして真っ暗な未来へと、
舵を取る船乗りの贖罪の物語。
険しい船路の果てに、恩寵は待っているのか?

壮大なロケーションの中での壮大な撮影。
そこに人生の深淵的テーマ。
取り返しの付かないものへの稔ること無き郷愁、
それを超克する為に、
喪失した世界の中を踠きながらも光を信じて一歩一歩前へと進んで行く人間の不屈の精神や悲壮感がそこに見えた。