よーだ育休中

シャウト・アウトのよーだ育休中のレビュー・感想・評価

シャウト・アウト(2020年製作の映画)
4.0
自分の傷なら耐えられる。
ーだが兄貴の傷は許せない。

異国シリアへ出張中の兄がインドにいる弟とテレビ電話をしている最中、突然テロ組織からの襲撃を受ける。スマホ越しに弟の目の前で暴行された兄は、二人組の男によって拉致されてしまう。怒り心頭に発した弟は、妻を引き連れてインドからシリアへ乗り込む。


◆ロニーーーーーーー!!!!

衝(笑)撃の《ハエ映画》に続き、インド映画二作目となった今作。《火薬と筋肉を愛する会》の選定作品でしたが、大変に良い作品でした!冒頭でいきなり『BAAGHI 3』とタイトルが出た時は『え!?三作目!!?』とビビりましたが、観終わった後にも『え!?三作目!!?』と同じ様にビビりました。登場人物たちの紹介や相関関係を説明するパートから、ヒロインとの出会い方を含めて、今作の中だけで物語が違和感なく完結していたからです。過去作の映像がカットインした様子もなく、過去作の出来事がトピックに上がったシーンも無かった様に思います。

143mと尺は長めですが、全くもって気にならない。一騎当千の戦闘シーンは回を増すごとにヒートアップしていきます。映画館で、廃車置き場で、敵地であるシリアで、主人公のRonnie演じるTiger Shroffが鍛え上げられた筋肉を惜しむことなく披露します。軽い身のこなしで障害物を飛び越え、美しい開脚からの華麗な脚技。二人同時に腕を捻り上げ、ラストは宙を舞いながら手榴弾をガンガン投げ込む大サービス!インドを代表する素晴らしいアクション作品ではないでしょうか!これを機にTiger Shroffの主演作品を追っかけしたい!

腕っぷしの強い警察署長だった厳格な父親をして『兄に手をあげたら、弟に撃ち殺されそうだ。』などと言わしめるほどの過剰なブラコンっぷりに正直最初は『こいつヤベェな』とドン引きしていましたが、最後にはこの兄弟のやり取りすら一つの様式美に感じられるほどに素晴らしいアクション・エンタメ作品であったと思います。


◆ロニーーーーーーー!!!!

自分はどんなにボコボコにされても(脇腹に鉄筋ぶっ刺されても)怒らないのに、優しくてドジっ子な兄が擦り傷を負わされただけでスイッチが入る弟。兄に呼ばれたら目をバッキバキにして颯爽と駆けつける弟。怒れる弟が敵を次から次へと擦り潰していく様は徐々にクセになります。虎の威を借る狐状態のお兄さんと弟のやり取りや、勘違いした敵方のコミカルなやり取りがサスペンス×バイオレンス作品に傾きすぎない、エンタメ性の高い作品に仕上げてくれていました。

かつて正義に燃えたものの、巨大な悪に破れてしまった初老の警察官が復讐を果たすシーンも描かれています。彼はテロ組織に与する地元のチンピラを恐れる事なく摘発したのですが、報復によってまだ幼い娘の命を奪われてしまいました。そんな定年間近の警察官に対し、兄弟が一計を案じて『逃亡犯をやむなく射殺した』というシチュエーションを作り出します。『さぁ、今こそ娘さんの無念を晴らす時ですよ!』と言わんばかりに犯人への発砲を唆す兄弟。私刑の正当化はかなり切り込んだテーマだと思いますが、モヤっとするよりもスカッとしてしまう描き方にされているのもエンタメ度が高いポイントでした。


◆ロニーーーーーーー!!!!

アメリカか!? ロシアか!?
いいや!!ロニーだ!!!

今作では後半から物語の舞台がインドからシリアへと移ります。自らを《国家》と呼称するテロ組織を叩き潰す事がゴールになるのですが、現地で知り合ったパキスタン人が主人公たちの仲間に加わります。小悪党然としたキャラクターでしたが、実際には永らく敵対関係にあるインドとパキスタンが作中では手を取り合ってテロ撲滅に邁進する姿には感じ入るものがありました。

改心した(?)テロ組織の一員が地雷を踏んだ子供の身代わりとなって、元仲間を吹き飛ばす姿も、小綺麗に描きすぎている感は否めませんでしたが、吹き飛ぶ前に自身で申述していた通り、この世の《業》からは逃れられないものだと伝えています。

弟におんぶに抱っこされていた兄が突如覚醒する展開や、めちゃくちゃクサい台詞で締めくくるエンディングには『なんか良いこと言いたいんだな〜』というのがめちゃくちゃ伝わってきます。メッセージを力技でねじ込んでくるのもアクション作品として一貫性があるのかも知れません。(んなわけ無い)

アクションやダンスのシーン展開はとても自然で上手だったのに、メッセージの入れ方が雑。この点も含めて、今作の愛すべきポイントだと思いますが!


*雑記*
『火薬と筋肉を愛する会』を通して、素敵なインド映画と出会う事ができました!火薬と筋肉に心躍るのは万国共通なんですね!言葉は要らない!筋肉で語らおう!(少年漫画の筋肉キャラみたいな台詞になってしまった)

今作ではシリアでドンパチを繰り広げていましたが、シリアが悪くないことはわかっています。憎むべきは非人道的なテロ。被災されたシリアの皆様の傷が一日でも早く癒えることを祈念しております。