エニワンセノービ

Jonas/ジョナスのエニワンセノービのレビュー・感想・評価

Jonas/ジョナス(2018年製作の映画)
4.3
予告も見ずにあらすじだけ読んで勝手にほろ苦い初恋モノかと思い込み鑑賞。思わぬ重さに戸惑いつつも、構成とカット割りの良さに引き込まれてしまいました。LGBTがどうというよりはもう少し広義かつパーソナルな、ひとりの青年が抱えてしまった暗部に迫る隠れた名作ではないでしょうか。

冒頭ひとり車中で怯える若いジョナスから分かる通りロマンスというよりはサスペンスな趣きですが、観終わった感想としては一周回ってロマンスだと思う。一見まばらな三十代のジョナスの行動と追憶が映すのは一貫して「ジョナスが奪われたもの」。点と点が繋がり事の顛末が分かる頃には、その大きな空洞に気が遠くなります。

奥手な少し垢抜けない美青年といった風貌の十代ジョナスと、なんだかだらしのない憂いと色気を帯びた三十代のジョナス。見ての通り別の役者が演じていて作中でもその変化が触れられるのですが、この差とふと見せる共通点がある種のキーポイントになっていて、その間の空白へと視聴者を誘っていく。18年間言えなかったジョナスの秘密。それが示すある事実が渦を巻いて今もなおジョナスを苦しめる。とはいえ救いのない話でもなく、対峙と決着、そして行く末を照らすラストにはヒリヒリした痛みとともに再生の兆しを感じました。

ただ、恥ずかしながらまさかここまでシリアスな内容とは思わず観てしまったのがどうにも悔やまれるので、また日を改めて観直したいところです。