このレビューはネタバレを含みます
異食症を取り上げながらも、ヒロインが自らを奮い立たせる姿を描く。
夫は多くの人に認められて出世したい、妻を愛して子どもも作って家庭はうまくいってる男になりたいだけ。いろんな偉い人に褒められてそれで自分の承認欲求を満たすことだけが男が彼女に愛しているという理由。
本当に愛している人には失踪した妻に子どもを返せとかお前一人じゃどうせ生きられないとかいう言葉が出てくるはずがない。
もし夫の裕福な家のもとを去れば、お金はないし、助けてくれる人の縁もないお先真っ暗な状況に置かれるだろう。
しかしたとえそうだとしても愛してる人のために尽くし続けるより、自分も誰かに認められるように自立すること、それこそが彼女にとって生きている心地を感じさせる。
異食症はそんな彼女の肥大する承認欲求から生じたもの。女性のある種の生き方を、異食症という目を引くタイトルを手段として、夫一家を絶対的悪にも、ヒロインを絶対的正義にも描かずにイーブンに撮ったのは素晴らしい。
エンドロールの女性トイレの定点カメラは非常に印象的。こう言うと逆に偏見のようになるかもしれないが、女性も頑張っているんだよ、男も女もないんだよというメッセージを感じた。
過去に何があろうと人に認められたいと思うのは男でも女でも人間一般に通用する感情。承認欲求を持つことは決して恥ずかしいことでもない。この映画の裏タイトルは"承認欲求"かな?
ピンク、赤、青、緑、オレンジとはっきりとした原色が多めなセットが気になった。不気味さ以上に女性の力強さを感じた。
文章めちゃくちゃですけど頭に浮かぶ言葉がたくさん出てくる議論し甲斐のある映画でした。