Maychang

Swallow/スワロウのMaychangのレビュー・感想・評価

Swallow/スワロウ(2019年製作の映画)
3.9
食べて、消化して、排泄する。
このシンプルなプロセスが、どれだけ繊細で、けれど生きる上で重要なものなのかと実感しました。

ハンターは一見幸せな主婦に見えるけれど抑圧された環境下で、
夫やゲストを喜ばせるための料理ならとても上手に作れるのに、
本能的に欲する食べ物は自分の体を傷つけ、けして栄養にはならない物ばかり。

ヘイリー・ベネットの、あどけないのに色気のある不思議な雰囲気がとても良かったです。
危険なものを食べているのに、高級な変わったスイーツでも食べているかのような満たされた表情とか。。


異食症は珍しい状態なのかもしれませんが、
自分を大切に扱う余裕がなくなるとなんだか栄養にならないものばかり食べたくなる感覚とか、
「ご飯を作って食べて片付けて寝る」ことが繰り返されるとふと、
なんのために食べている?生きている?と虚しさを覚えることなどはあります。

食べ物だけではなくて、言葉や経験なども、
居心地悪いものや緊張感のあるものに囲まれていたら、受け入れられなくて消化しきれない、出せないですよね。
ハンターの夫や義父母も、完全悪ではなく価値観の偏りがあって、それが自覚なく無神経にハンターを傷つけているなど、リアリティがありました。

ラストの長回しは、シンプルなのにとんでもなく惹きつけられてしまいました。

そういえば以前友人が、妊娠時やたらと石鹸が食べたくなったと言っていました。
妊娠時の体は多かれ少なかれ、いろいろなことが起こりうる側面もありますね。

自立や主体的な生き方を考えさせられる良作でした!
Maychang

Maychang