おなべ

Swallow/スワロウのおなべのレビュー・感想・評価

Swallow/スワロウ(2019年製作の映画)
3.8
◉単なるスリラー映画ではなかった。本作を観て何も感じ取れないようじゃ、価値観をアップデート出来てないと言われても仕方ない気がする…。

◉ニューヨークの郊外、大邸宅で悠々自適に暮らすハンターと夫のリッチー。誰もが羨む暮らしを手に入れ、完璧な人生を送っていた…はずだった。

◉《カーロ・ミラベラ=デイビス》監督自身の祖母が、強迫性障害で手洗いを繰り返すようになったエピソードに着想を得て、本作を制作したという。詳しい事柄を説明するとネタバレになるため、鑑賞後にチェック!⭐︎

◉妻のハンターを演じた《ヘイリー・ベネット》の怪演。彼女が抱える赤色の感情を、鬼気迫る演技で見事に体現していた。

◉《カーロ》監督の巧みな映像演出とメッセージ性に高評価。見事な切り口でそれらの要素にアプローチしており、その秀逸な演出に唸らされた。












【以下ネタバレ含む】












◉ラストのエンドクレジットシーンを観て、完全に腑に落ちた。この作品は彼女の奇行にフォーカスしたスリラー映画じゃなくて、女性の抑圧を描いたセクシャリティーな作品なんだと。それも、夫の本性・家父長制度・ミソジニー・アウティング・性暴力etc…様々な角度から性差別の実態や生きづらさにアプローチしており、その全てに心を揺さぶられた。

◉話もロクに聞いてもらえず、子を産む事を強いられ、家の外に出ることさえままならない。まるで、夫の所有物かのようにぞんざいに扱われる毎日。それらの一つ一つの我慢や閉塞感、疲弊感、ストレスが積み重なり、精神的に追い詰められた結果、異食症という“逃げ道”“解放”に辿り着く。つまり、異物を飲み込む行為こそが、彼女のせめてもの抵抗であり、唯一の自由な選択。もちろん、異食症に追い込んだのは、人間失格夫やその他の理不尽な外的要因である事は、言うまでもなく…。

◉それでも、少しだけ希望を持てるラストだったと思う。家や夫から逃げ、この世に生まれてきた意味を見い出し、自由を手に入れて人生を再出発できたハンターに愁眉を開く。願わくば、この世に存在する全ての性差別や抑圧が無くなり、全ての害悪男たちのおチンが切り落とされますように。
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