midored

Swallow/スワロウのmidoredのレビュー・感想・評価

Swallow/スワロウ(2019年製作の映画)
5.0
まーよくこれだけの要素をまとめ上げたものだと感心しました。

幸せそうな玉の輿結婚のふたをあけてみれば主人公をナチュラルに下にみているモラハラ夫と義両親!味方のいない環境で、淡々と示される無視とさげすみ描写は地味に辛い。

これは階級差のあるカップルだけでなく、支配被支配関係にある人間関係ではありがちなヤツだなぁと見てて思いました。やってる方は悪気がない。なんなら頭足りないオメーを大切にしてやってるんだ感謝しろやくらいの勢いで接してくる。タチ悪い。

モラハラ夫のモラハラ具合には眩暈がしてきますけれど、この男もまた成人してなお自分の両親に支配されており、自由がない描写が所々に入ってます。つまり、おそらくは子供の頃からずっとありのままの自分を愛されてきてない人間なわけです。主人公と同じくらい不安を抱えて生きてる男なのです。

ここをちゃんと入れてるのもポイント高いと思います。だからこの男は主人公のような、受け身で無力感にじみでる女を選んだのだなーと分かりるからです。彼女といれば力をもてたような幻想が抱けるんでしょう。要するに精神的に依存してるわけです。お互いに。

それに加えて主人公と実母の関係性です。あの電話のシーンくらいぞっとする場面はありませんでした。正直、危険物を飲み込むシーンよりぞっとしました。事情が事情なのもありますが、いわゆる毒親というやつです。あのシーンでますます主人公の精神的な状況が明確になってました。分かる人にはめちゃくちゃ刺さる描写だと思います。

暴力ともいうのが、男女間、親子、階級の差によってなされており、なおかつ、パワーの奪い合いである事が良く分かるように作られていました。支配やコントロールもまた暴力であり、妊娠中絶もそこに関係してくる問題なのだと改めて感じます。感動的なラストシーンふくめ、女性によりそい励ましてくれる映画です。
midored

midored