たくみ

Swallow/スワロウのたくみのレビュー・感想・評価

Swallow/スワロウ(2019年製作の映画)
3.5
異食症の女性が主人公の物語。

幽閉に等しい環境の中で頼れる人もいない中でどんどん狂っていく様がリアルで恐ろしかった。
格の違う人との結婚により身の丈に合わない生活を強要され、大人しく家にいる主人公のハンターだがどうも幸せそうに見えてこない。
というか、ハンターは作中通して一度も幸せには見えない。
そんな彼女がどうにか抑圧から解放されるために、一瞬の快楽を求めるために行う行為が異物を呑み込むということである。
端的に言うと自傷行為であり、多くの人からはやめた方がいいと止められるが、この行為でしか満たされない何かがあるので止められず、今作の主人公は日常を失っていきます。

作中の描き方もえげつないのですが、特にラストが衝撃でしたね。
幸せに“感じてしまう”ことはやめられない。幸せだから。
それをある部分の”滲み方”で表現するというのがスマートだなと感じました。
作中ずっと散りばめられている「赤」のモチーフがラストでも活かしているのもお見事でした。

彼女が異常かの様に描かれているが、旦那側の家族も結構イカれている。
ああいう姿を見ると、富や名声を持っているから聖人であるわけではないというのがわかりますね。
あんな人間になるくらいなら平均くらいの稼ぎでいいやと感じました。

話が逸れましたが、まず旦那の父親が最悪。
人の話は聞かない。子どもを授かった夫婦にかける第一声が「次期CEO」。
どんだけ仕事出来たとしてもああいう人間は社会では意外と陰口叩かれている感じですね。

そんな親に育てられたが故にそれが“正常”だと思っている旦那。
彼は感情のコントロールが出来ない。
ネクタイのシーンが顕著で、アイロンされ大丈夫と言っているが乱暴にシャツを脱ぐ。
金あるならスペアの正装くらい持っとけよって感じですが、そういった自分の感情第一優先で動く感じもズレているなと感じました。
あれは追々暴力振るうタイプの人間の様な気がしてならなかったです。

「”異常”ではない=“正常”」だと思い込んでいる旦那側の家族が、どちらも“異常”であることに気付けなかった故のバッドエンドなのかなと感じました。

エンドロールに関しては大島育宙さんのYoutubeの解説が一番なるほどとなりました。
女性は想像以上に社会という荒波に抗いながら生きているのかもしれませんね。

かなりメッセージ性が高く、見落としている部分もあるかとは思いますが、今回見た中で感じた事としてしたためておきます。


【その他メモ・独り言】
・赤のモチーフ:ドレス、ビー玉、窓に貼ったフィルム
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