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Swallow/スワロウのrensaurusのレビュー・感想・評価

Swallow/スワロウ(2019年製作の映画)
4.5
側から見れば何不自由なく過ごしている主人公ハンターの、見えない鳥籠が徐々に見えてくるような映画で、逸脱の快感と鳥籠からの解放が血生臭く描かれていた。「飲み込んだ」ものは「排泄」しなくてはならない。

ハンターが玉の輿に乗ったからとナチュラルに見下している一家による、細かな侮蔑や圧迫を小出しにして見せていくことで、徐々に蝕まれていくような感覚を共有できた。

スマホゲームをしているところを見せられなかったり、家の中のことを完璧にしておかないと落ち着かなかったりと、日常が緊張で張り詰め、素が見せられないものになっていた上に、妊娠という大イベントが現れることで、異物を飲み込むという「逸脱」に心地良さを感じるようになってしまうという過程の描き方が綺麗だった。

また、姑に「本当に幸せ?」と聞かれても、自分への自信の無さや、一家に馴染もうと取り繕う構えがあるため、上手く心情を吐露出来ず、悪い方向に進んでしまう苦しさもあった。

そういった自分の意見を言えない性格の一端である過去のトラウマを克服することで、自分の人生を自分で決めるという能力が回復し、ラストで堕ろすという決断を見せる展開には驚きと同時に、巣立ちの清々しさ、もとい、排泄後のスッキリ感が込み上げてくる、何とも不思議な映画だった。

エンドロールは女子トイレをノーカットで流すことで、その誰もが飲み込んだものを排泄していることを実感させられるもので、斬新で面白かった。女性だけでなく、男性にも何かを投げかけてくれる、ボディホラーにとどまらない作品でした。
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