ふせん

Swallow/スワロウのふせんのレビュー・感想・評価

Swallow/スワロウ(2019年製作の映画)
3.2
裕福な家に嫁いだハンターは、妊娠を機に異食症を発症してしまう。

ハンターの出生には秘密がある。本人は吹っ切れたと思っているが、自らの妊娠で蓋をしていた感情がこじ開けられてしまう。

異物を飲み込むことで得る達成感だけが、恐怖や痛みをを押しのけて自己肯定感を高めていく。
ハンターがこれまで押し込めてきた感情や葛藤。こぼれ出しそうなそれを上からさらに押さえつけるように異物を飲んでいく描写に、不穏と束の間の安心がみえて苦しかった。

ハンターは妊娠を知った時はじめて、自分が中絶の選択肢のなかった母と同じ状況にあることに気づいたのではないだろうか。夫や義理の家族からは軽んじられ、カーテンの色や髪型すら選択を尊重してもらえない。
ハンターは孤立無援だったわけではない。表面上、愛してくれる夫や金銭的援助をする義理家族。仕事以上に気にかけてくれる看護師やカウンセラー。それでも真綿で首を絞められるような孤独に呼吸が絞られていく気がする。

この作品はハンターが自分の人生を選択して歩むための話だ。選んだ先が良い人生に繋がるとは限らないが、異物を飲む以外の自分の愛し方を知ったハンターを応援せずにはいられない。

作品を通して、重い事柄をポップに見せている計算尽くされた色合いが素晴らしかった。
えずいて赤らむ顔。便器のなかの鮮血。赤はハンターの選択の象徴なのだろうか。対する青は縛られた生活を表しているのかもしれない。スカイブルーのカーテン、シワ取りを失敗した青いタイ、前半のハンターは何度も青い服を着てる。

挿入歌は「愛が欲しいだけ」と歌っていた。誰もが愛を探す人生なんだな、と考えさせられた。まずは自分自身を愛するところにたったハンターに勇気づけられた。
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