海老シュウマイ

蒲田前奏曲の海老シュウマイのネタバレレビュー・内容・結末

蒲田前奏曲(2020年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

苦手すぎる中川龍太郎もこの尺でならさほど気にならなかった。
旧来からの男の理想像みたいな古川琴音をファンタジーとして言い切ったり、当然、自分のやりたいこともある生身の人間として扱うことや、最後に松林うららと「連帯」させるのも定番だけど良かった。
クソ監督を中川と呼ばせるところも自己批評的で良かった。

そして、昔流行った「人間の安全保障」とかガルトゥングの「積極的平和」とか、性差の問題はそれだけが解消すれば良いわけではなく、ジェンダーの問題を「平和」の問題として捉える思考はちょっと唸らせられるものもあった。

何より、四連作の最初がこれでラストではないところが好きで、これをラストに持ってきてファンタジーで終わらせたら、ふざけんな!ってなってた気がする。

そして大好きな穐山茉由氏はやっぱり会話が良くて、ちょっと典型的すぎるキャラクター達だったけども伊藤沙莉で救われた。
安川有果は実質メインのお話として、男女が持つ視点の違いをきっちり描いていたし、瀧内公美さいこう。

ラストは異色だけど、#MeTooの文脈で見れば全然アリで、
単純に劇中の渡辺紘文が10年後でも、あの「りこさん」に手を出すかって話で、たかだか10歳の素人相手でさえあの扱いをする時に、力関係を利用した性暴力なんかやるかよバカってメッセージかなとは思った(たぶん違う)。

そして、その斜めからの切り取り方は逆に好印象で、男性が迎合的に「私はフェミニストです」と言い切ってしまうことほど胡散臭いこともないわけで、それを前面に出さない作りは良心的だった気がする。もちろん東京集中批判やオリンピック批判もさいこう。

何よりこのお話をラストに持ってくる構成が素晴らしくて、1番や3番をラストに置いて凡庸になりがちなところ、これで終わる。さいこう。