ねこ無双

私のプリンス・エドワードのねこ無双のレビュー・感想・評価

私のプリンス・エドワード(2019年製作の映画)
4.0
ラブコメかな?、と思ったけど違う。
自由選択をしているようで、実は不自由な選択でしか生きられない女性。
その揺れ動く心の描写がうまい佳作。
不自由な選択で生きている、その思いに共感の目をもって。。

フォンは香港のモールの中にあるウェディングドレスも扱うレンタルドレス店で働く女性。
長らく同棲中の恋人エドワードからプロポーズをされたのをきっかけに、嫌な胸騒ぎがして自分の籍を調べてみます。そしたらなんと他の男とまだ婚姻中だった!
香港人のIDを得たいと願う中国人の男とかつて偽装結婚したのは10年も前のこと。すっかり籍が抜けてくれていると思っていたのだったが。。
再会して離縁を迫るも、彼の承諾の条件は香港のIDを取得すること!
彼の夢は香港IDを手に入れ、LAに移住することだった。
婚約者にバレる前に離婚する!そのための偽装工作が始まった。

主人公の恋人が束縛するタイプ…
例えばどこにいるか掴めないとどこにいるか電話に延々とメッセージを送り続けたり、
義母もまたアポ無しで住まいに突撃してきて模様替えを敢行したり。。

恋人は嫌いではない。
寛容できないわけではない。
怒ってはみるものの結局それに抵抗できず、なあなあな不自由さを受け入れてしまう主人公。
それに反して籍だけ夫の中国人の男が自由を求める姿に、いつしかフォンの心には迷いが。。

結末の表現には二つの可能性が秘められていると思った。束の間の自由か永遠の自由か。
本編中はずっと眉をひそめた不機嫌顔の主人公。
ラストには浮遊感、解放のようなものを感じとれました。

ジム・ジャームッシュ作品のコラージュに、テーブルの上には日本製ごろっとグラノーラの袋!
いろんな国の文化、好きなものがさりげなくMIXされた生活。
2019年の映画なのでちょうど自由について香港が揺れ動く前の時期?

妊娠した恋人と結婚するためにID取得を諦めようとした中国人の男。
その時の彼とフォンとの印象に残った会話。
フォン「LAはいいの?自由はいいの?結婚は不自由よ。IDこそ自由よ。」
男「結婚しても自由だ。独身なら自由?じゃ、行きたい場所は?」
(沈黙するフォン)

舞台が香港の九龍、プリンス・エドワード駅周辺。
そして主人公の恋人の名前がエドワード、と二つのエドワードがタイトルにかけられてます。