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グッドバイのtakerattaのネタバレレビュー・内容・結末

グッドバイ(2020年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

2020年作品。
プライムビデオで鑑賞。


仕事はするし、こなせるが、好きにならずに、途中で辞めてしまう。

平凡なOLを退職し、未認可保育園の、保育士見習いで、人手不足を、春前まで働く。つなぎの仕事。

どこか虚ろな、単調なストーリーだが、見え隠れする、本気になれない寂しさが、
タイトルになっていた。


母子家庭。
事情があって、父が居ない。

記憶もそんなに無いなかで、父子家庭の園児の女の子の、お迎えに来る父親家庭に、夕ご飯を作りに行く。

普通の家庭、ママとパパがいる。
子どもも、ママが座るダイニングテーブルの席を覚えている。


どこと無く、常にアンニュイな「ここでない感」が、思いっきり燃えてのめり込めない、
どこか「一歩引いてしまう」姿をよく演じてた。


自分は、捨て子から後から父親ひょっこり現れ、父子家庭に。
そりゃ、「親父!お前は、芸人のひょっこりはんかよ?!」とね。笑

DNA鑑定4回とか、養子縁組と違うから
戸籍起こすのは偉い大変。

お金も掛かったけど、一方で、「親、居たんだー」という、何だろうな?安心感、少し違うか?

「自分にルーツがある、浮雲や水草のようだったのが、やっと地に足ついた」ような感覚。

映画は女性を主役に描いているが、
ミーハーで広く浅くな、我が事のようにも感じた。


父親の匂いとかは、男親と息子の男同士なので、
分かんないし、意識もしなかったけど、

よく、他人ちに見聞きする、
おばあちゃんちの匂いだ〜とか、
彼ピのシャツの体臭嫌いじゃないって、
女の方は、そこそこ居られて、

最初は「マニアックだなぁ〜」と思いつつも、
あれかな?新築の家とか部屋の、木の香りみたいなものかな?とか。

家業は継がなかった(継げなかった)けど、最初会えなかった母親は、耳鼻科の人なので、

鼻の臭覚と、舌の味覚って、繋がりなんだよなと。

「この味が好き!」って料理も、鼻つまんで食べると、味変わるし、
昨今の緊急事態宣言で、流行病の後遺症で苦しむ方も居られるかもだが、
「味覚が分からない」と、食べる楽しみ減ってしまう。

食べ味わうは、生きる!なんだよなぁと。


さてさて、
ラストシーンが、ブラックアウトではなく、
白一色一気にワイプアウトのラストシーンで、

敢えて、BGMを止め、
主役の台詞を活かした意味が

分からないと思う方は、

母の台詞や、行動、
主人公の変化や、

最後の夜に何故、ハグってああ言って、
背中から上に迫り上がったか?
で、分かるかな?と思ったのだが。

先を描かない美学が、この女性監督の世界観だろうので、書かないでおくべきなぁ。汗


娘から女に変わった
(正確には、母親は煙草吸う夫の甘ったろい匂い、嫌いでなかった、ように)
しっかり嗅ぎに、吸いに行った。

その時、母親は、家から夕飯作らず何故か離れた、
父娘水入らずな訳だが。

一晩の、ファーザーコンプレックスを埋めて、
伝えたかった、会いたかった、
ぽっかり人生で穴になってた、父親を
埋め尽くしたんだろうなと。
娘として、そして女として(違うかな?!)


若干、近親相姦的とまでは行かなくとも

パパとお嫁さんになるって、園児のビュアな気持ちにも似た、
これまでの人生で言えなかった、想いをぶつける一夜になったろうと瞬時に思えた。

(実際に、bewteen the sheetsなbed inまではしないだろうが、
「パパのお布団で眠りたい〜!」的な感じ?!)


子役から準主演、主演級まで演技で、
映画、ドラマで駆け抜けた、
主演福田麻由子さんは2022-12-30で、
芸能界を引退、休養になった。

その半生を賭けた、孤高感も
このタイトルに重ねたかな?!とも思えた。


また明日!で、父親とは、終われるのに
園児とは、卒園後は、小学校ご入学な訳で、

また明日!あ、間違えた、バイバイ
と、お別れになってしまう。

実の産みの母親からも、
「あんたも独りで生きて行けるようにしなさいよ!」的な、
割とドライな「大人扱いされる年齢的には大人」ではあるが、

子離れ出来てる親と、
親離れ出来ないでいる、実家の子どもに
ありがちなシーン、

そりゃ平凡だ。

だが、旅立ちの春先に、
桜の花は、散りゆく儚き運命。
主役の役名が、上野さくらだ。

その「散る定めを知り美しき」と讃えるなら、
親が名付けた、可愛いさくらという名前は、
少し切なく残酷さもあるものにも受け止められそう。

そして、我が家も売られ、そのお金は、
持分で父母折半。

実家がいよいよ無くなり、
本当に、帰る故郷も無くなる虚しさ。

両親がはっきりは言わないが、
家政経済的にも、経済の最小ユニットである、
夫婦をはっきり辞める。
つまり、成人していれば、父方、母方に連れてゆかれる訳でもない。

母親が夫の匂いを嫌いでなかったと、
実の血縁の娘に、「女の感覚の男の話」が出来る年齢だ。

そんな夜の、言いたくないお別れの言葉、
バイバイではなく、グッドバイ。

グットラックではないのだな、
ほぼ永遠の別れ、家族解散だから。

あまり生々しく描かないけれど、
静かな中に、伝えたかった想いや、ハグしてみたかったでっかい父親の背中や、
父が作った手料理がとても美味しかった夕ご飯。

最高の夜が、
若さのクライマックスとは!と、
少し泣きそうになった。

敢えてそこでカットアウトした事で、余白を残し
人生のさまざまなありようを余韻に残した撮影手法は素晴らしいと思う。

つまらない方は、きっと親子関係やカレカノ、友達関係が充実してるってことで、それはそれで安心な事だから、それで、いいのかなと思う。

刺さる人には刺さるし、そういう立場を人生でまだ味わったことのない殆どの人に、学ぶチャンスにはなってるのに、

ラスト分からんは、勿体無いなぁ、修羅場でない別れの美学を描けてるのになと、
私は私なりの、主役名や、描かれる生き様や、家族関係から、伏線回収をしてみました。

きっとあの夜に、娘も、父親離れの卒業が出来たと信じたい、そんな気持ちになりました。

正にこの春先に、観るのがよいのかも!
お勧めです!

^ - ^)ノ マタアシタ!

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第30回映画祭TAMA CINEMA FORUM「TAMA NEW WAVE ある視点」部門

第15回大阪アジアン映画祭の「インディ・フォーラム」部門 出身作品


監督・脚本・編集 - 宮崎彩 (長編映画初監督)
撮影 - 倉持治
照明 - 佐藤仁
録音 - 堀口悠、浅井隆
助監督 - 杉山千果、吉田大樹
制作 - 泉志乃、長井遥香
美術 - 田中麻子

ヘアメイク - ほんだなお
衣装 - 橋本麻未
フードコーディネート - 山田祥子
スチール - 持田薫
整音効果 - 中島浩一
ダビングミキサー - 高木創
音楽 - 杉本佳一

配給協力 - ミカタ・エンタテインメント
配給宣伝 - ムービー・アクト・プロジェクト
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