けーすけ

写真の女のけーすけのネタバレレビュー・内容・結末

写真の女(2020年製作の映画)
2.8

このレビューはネタバレを含みます

東京の片隅、父親から引き継いだ寂れた写真屋を営む平間械は、遺影写真やお見合い写真などの撮影・レタッチ(加工修正)を行う日々を送っていた。ある日、趣味の昆虫撮影に山へ行くと女が木に引っかかっていた。彼女はキョウコと名乗り、SNS映えする写真を日々撮っていたが、滑り落ちて身体に傷を負ってしまったのであった。平間は持ち前の技術で彼女の写真から傷を消しキョウコもそれに喜びを覚えたのだが、徐々にキョウコの承認欲求が揺らぎ始める事に・・・





ものすごく不思議な雰囲気の映画でした。ハマる人にはザクザク来るかもですが、苦手な人には全く受け付けなさそうな気がします。

とりあえず、昆虫(主にカマキリ)がドアップで映し出されるのと、虫の捕食シーンや音が何とも生々しいので苦手な方はご注意を…。


SNS(インスタっぽいやつ)や画像加工という現代描写なのに、械が仕事して暮らす家の古い感じや軽自動車、銭湯といった描写がビシバシと昭和感を出しており、なんとも言えない違和感が面白かったです。


キョウコはSNSで日々自分の“イケてる”画像をUPし続け、フォロワーからの反応を楽しみに生きています。怪我をした生々しい傷をそのまま投稿する事にためらい、械のレタッチ技術に助けられるのですが、それが徐々に「これは本当の自分なのだろうか」という疑念を生み出す事に。

そのきっかけとなったのが、械の元にお見合い写真を撮りに来た女性の存在。その女性は撮影後の画像加工であれこれと注文を付けるのですが、徐々に別人のような画像になっていきます。

それを見てキョウコは「別人になっちゃう」と言うのですが、「他人の目に映る自分が本当の自分なんです。写真の私が本当の私になりますから」と答える女性。そんなやりとりから生まれたキョウコのモヤモヤが本作の一番といえる主題でしょうか。

尚、このお見合い写真女性がラストにかなり痛烈なオチを持ってきたのが笑えました。


写真もそうですが、鏡を通して表情や人を映し出す部分も印象的な描写で注目ポイントでしょうか。


カマキリに関してはそのまんま男女表現となっているのですが、械が最後に提示した答えが「なるほど…」という部分で、色んな意味でかっさらっていく衝撃ラストでした。

エンドロールに「カマキリ指導」というクレジットがあったのも驚きでしたね。カマキリ、指導できるんや…笑










さて、正直なところ僕にはあまりハマらなかったので、今回はネタバレ設定で無理だったポイントをつらつらと…。ストーリー核心のネタバレではないのですが、鑑賞時の感情に間違いなく直結すると思いますので未見の方はご注意くださいませ。




キョウコはSNSでスポンサーも付くくらいのインフルエンサー(でもフォロワー数少なかったような…)。怪我しても「保険証がないから」という理由で病院にも行かない、と。自分自身が商売道具なのにどんな生活&考えしとるねん!

で、たまたま出会った械に着いて行き「助けてくれたお礼に」と械の車のキーを盗み食事へ連れ出すという謎行動。行った先のお店前では22時のメロディにあわせていきなりバレエを踊り始めるという不思議ちゃん。食事中も「ネズミ、見た事ある?おっきいネズミ」とネズミを連呼して店員に窘められるという、、、こいつ頭おかs(以下略
そして行き場がないからという事で械の所へ無理やり住み着くという。一体どんな生活してきてたんだ…。

という感じでキョウコには序盤から全然感情移入できなかった。



械においては序盤からセリフが全く無い人物。「喋れないのかな?」とか思うもののそういった説明や手話などの動作は一切なく物語は淡々と進んでいき、なんでセリフが無いのか悶々モヤモヤ。そういう設定とはいえ、一切喋る事無く生活ができるわけが無いでしょという違和感。

そして最後に「お前喋れるんかーい!!!」という、ただ寡黙な男というだけであったというオチ。狙ったのだとは思うけれど、見ていてキツかった。
でも表情やらで感情表現をしていた部分は良かったと補足しておきますかね。



あと、セリフを含めて環境音等全てがアフレコされたと思われる作りで、リップシンクのズレや、やたら大きな足音や不自然な生活音、着信音のごとく延々とリピートされる虫の声など、気になってしまう人にはかなり違和感を覚える部分かと。
今回オンライン試写という事でイヤフォンで視聴したゆえかもですが、ASMRに近いものがあったかもです。カマキリの咀嚼音、なかなかに気持ち悪かったです(一応褒め言葉)。でも音がズレて見える部分があるのはいただけない。



そんなわけでこんな評価となりました。つまらないわけではないけど、もう少し突き抜けた何かが欲しかったかも。


2021/01/10(日) cocoの特別オンライン試写で鑑賞。https://coco.to/
[2021-004]
けーすけ

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