Cocoon

メイド・イン・バングラデシュのCocoonのレビュー・感想・評価

4.8
女性を取り巻く困難と、打ち克つ強さを描いた作品。
終始クズ男のオンパレードで、本当に腹が立つのだが、最後に少しだけスカッとする。
主人公の取り巻く環境や、社会の中で脆弱な女性という立場、変わらないように見えるコミュニティ内で変わろうとするのは、本当に勇気のいることだと身につまされた。私がもし彼女の立場なら、失職するリスクや仲間のリスクを考えて、怖くて何もできなかったかも知れない。
今の女性の立場があるのも、こういった勇気と知恵、強い意志のある女性たちが道を切り拓いてきたからだと改めて思った。そういう意味で、とても力づけられた。
また常に権力側にいる男性の、脅かして支配するために使う暴力の酷さ。職場でも家庭でも、恫喝し支配する手段として容赦なく使われる。作中での「女性は支配しやすいと考えられてるから、不当な条件で働かされやすい」という言葉通りだ。
それだけに、主人公のシムが学んだ経験や知識を活かし、最後に暴力でなく知恵の力を使っていることは、新時代の始まりを感じさせる。

また、作中のヒジャブの色や脱ぎ着の使い方が秀逸で、ぜひ注目してほしいと思う点である。ヒジャブの習慣のない国で生まれ育つとピンとこないが、イスラム社会の女性にとって、口ほどに物を言う自己表現の手段でもあるのだなと思った。
使われる色も鮮やかで、喧騒の街中で際立つ女性の衣装の美しさと、彼女たちの置かれる過酷な状況との対比が強調される。
個人的にはシムの自宅の配色が、かわいくてお気に入り。

それにしてもジェンダーギャップが大きい日本だから、こういう男性から家庭内で恫喝されたり、決定権を持つポジションの大半が男性を占めるから、利権や権力と遠ざけられて久しい女性の立場は本質的に変わらない。女性同士が協力して、抗うことの大切さを学んだ。
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